絶滅の危機から蘇った、小さな鳥の奇跡の物語『オールド・ブルー』

 ニュージーランドの東に、チャタム諸島と呼ばれる島々があります。吹き付ける強風のためがっしりと太い幹の木が育ち、波が打ち寄せる岩場にアザラシが遊ぶ島。そこには、何千年もの間、様々な種類の鳥たちが、のどかに暮らしていました。

それが、人間がやってきた途端、事態は急変。島の多くの動植物が殺され、住めるところは減り、食べ物もなくなりました。島の生態系は完全に崩れ、研究者が気付いたときには鳥は既に何種類かが絶滅しており、何百羽といたブラックロビンという鳥も20羽にまで減っていたのです。

研究者たちが手を尽くしたものの、とうとう5羽になってしまったブラックロビン。その中の1羽が、ブルーという名のメスの鳥でした。ブラックロビンは寿命が4・5年で、一生同じ相手と過ごすのが一般的だと言われています。けれど、ブルーは9歳という高齢で新しいオスを迎え、卵を産んだのです。

オールド(年とった)・ブルーの奇跡の始まりでした。

その後オールド・ブルーは、13歳で命を終えるまで、たくさんの卵を産み、たくさんのひなを育て、ブラックロビンを絶滅の危機から救ったのです。

『オールド・ブルー』で注目したい3つのポイント

まず一つ目は、細部まで描き込まれた美しい絵です。『オールド・ブルー』について語られるとき、「あの美しい絵本」と言われることは、とても多いように思います。羽毛の1本1本、落ち葉の1枚1枚が緻密に描かれている上、色遣いも繊細。特にブラックロビンの瞳は、吸い込まれそうなほど美しい光に満ちています。
 
ブラックロビン写真

うすずみ色のチャタムブラックロビン(c)UNIVERSITY OF CANTERBURY

二つ目は、オールド・ブルーの賢さと健気さ。研究者が付いていたといっても、ブルーの子育ては決して順調なものではありませんでした。

研究者たちは、無事にひなを成長させるために、ひなをブルーから離してヒタキに育てさせたり、大きくなったひなを突然またブルーの巣に戻したり、あれやこれやと試したのです。ブルーは戸惑いながらも、とにかく目の前にいる子どもたちを育てることに専念しようとするかのように、一生懸命えさを運びます。

その姿には、子どものみならず大人も引き込まれてしまいます。特に、必死で子育てしているお母さんたちには、思わず涙が出てしまうという人も少なくありません。
 
そして三つ目が、その幅広い読者層です。『オールド・ブルー』の対象は小学校低学年からとされていますが、絵本にしては文量にボリュームがあり、環境問題を扱っているので、中学生・高校生にもよく読まれています。この絵本を読んで、進路を環境学へ決めたという高校生もいるほど。きちんと作られた絵本だということが分かります。

 

『オールド・ブルー』を環境問題について考えるきっかけに―

手写真

地球を守るために、できることから―

ブラックロビンは、未だにIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに掲載されている、絶滅危惧種です。2012年度版のレッドリストによると、哺乳類のおよそ5種類に1種、鳥類のおよそ8種に1種が、絶滅の恐れのある生きものとされているのです。

絶滅危惧種の話をすると「動物は好きじゃないから興味ない」という子どもも出てきますが、その場合は、「かわいそうだから」という理由だけで保護するのではないことを理解させたいものです。

地球上には多くの種類の生きものがいること、それらはお互いにつながり合っていてバランスが崩れることで皆が生きていかれなくなること、絶滅の原因のほとんどが人間であることを説明してみてはいかがでしょうか。

まずは、ブラックロビンのように絶滅しそうな生きものがいるという事実を知ることが、全ての一歩になるのではないでしょうか。

The Black Robin
ブラックロビンの保護をした研究チームのページ。『オールド・ブルー』のドン・マートン博士も所属されています。

IUCN
英語ですが、レッドリストデータベースが利用できます。「black robin」で検索すると、ブラックロビンについての情報を見ることができます。

IUCN日本委員会
おりがみアクションなど、日本で行われている自然保護に関するプロジェクトの内容などが見られます。キッズページもあり。

NewZealand Birds OnlineのBlack Robinのページ
ブラックロビンの基本データや写真を見ることができます。ぜひ聞いていただきたいのが、ブラックロビンの声。「歌う」ということばにふさわしい、明るく高い囀りです。

日本鳥類保護連盟
愛鳥週間について説明されています。

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