木造住宅には大きく2種類の工法がある
まず、木造住宅についての基本事項を改めておさらいしましょう。我が国には木造住宅と呼ばれる工法が大きく二つあります。一つは伝統的な「木造軸組工法」(在来木造)、もう一つは北米生まれの「ツーバイフォー工法」(枠組壁工法)です。木造軸組工法は、簡単に説明すると柱と梁で構造体を支える仕組み。敷地への対応力が高く、狭小地が多い日本の敷地に対応しやすいのが大きな魅力です。また我が国伝統の工法ですから、施工に慣れた工務店や大工さんが多く、日本の住宅で最も多く採用されている工法です。そのためジャパンスタンダードな工法といえます。
ツーバイフォー工法は壁を組み合わせた構造。箱状にすることで構造強度を高めることができます。こちらは日本には1970年代から建て始められるようになりましたが、今では欧米や中国など世界各地に普及が進み、ワールドスタンダードな住宅工法になりつつあります。
このほか、丸太をくみ上げた住宅などもあります。要するに、構造体(基礎以外で住宅の構造を支える素材)に木材を使用する住宅のことを木造住宅と呼ぶのです。我が国の住宅工法にはこのほか、鉄骨造やコンクリート造(RC造)がありますが、特に戸建て住宅では圧倒的に木造住宅が多いのが現状です。
さて、木造住宅は戸建てだけでなく寺社建築なども含め長く日本の主流でしたから、私たちは一般的に「住宅は木で作られるもの」と考えがちです。言葉が適切ではないかもしれませんが、私たち日本人のDNAにそうすり込まれているような気がします。
「木質感」、「ウッディー」は木造住宅の専売特許?
ですから、「木がふんだんに使われた住宅が理想の住宅」なんて感じる方も多いのではないでしょうか。では、逆に木造以外の工法の住宅はどうでしょうか。構造体以外、つまり内装に限ってみると、工法の間で木材の使用率というのはそう変わらないといえます。右の写真をご覧下さい。一見、木造住宅の内装に見えますよね。床にはもちろん木のフロアが使われていますし、建具にも木が使われています。ですがこの建物、実は鉄骨系の住宅なのです。あらゆるところに木質建材と呼ばれる素材で覆われており、だから木造住宅のように見えるのです。
もちろん、木質建材は木造住宅の内装材としても使われます。ですので言葉を換えると、内装だけをみると木造住宅もその他の工法の建物も、一般的にはそれほど大差の無いレベルなのです。住宅の表現に「木質感あふれる」「ウッディ」などが使われますが、それは最近では特に木造住宅を表現するものではなくなってきたような感があります。
最近の住宅にはこのように木質建材が多用され、それは様々な加工を経ていますから、新築住宅であっても「新築のにおい」がしなくなっているというのが最近取材していて感じること。構造体に木材を使用する分、木造住宅の方が幾分、新築のにおいが強いのかもしれない、そう思う程度です。
もちろん、住宅はこだわればこだわるほど様々に変わってきますから、内装材も含めムク材を使用することでより木質感、ウッディさを強めることもできます。ただ、それは現在では木造住宅の専売特許ではなく、その他工法の住宅でも比較的表現しやすくなっているともいえそうです。
では、耐震性能や防火性能についてはどうでしょうか。次のページで木造住宅の現状を確認したいと思います。