なかでも、人知れず割安に入手できるせいか、ED(勃起不全、勃起障害)治療薬の売れ行きは悪くないのだそうです。しかし、何度も申し上げていますが、ED治療薬の入手には、病院やクリニックを受診して医師の処方を受ける必要があります。この手順が省かれている時点で、通販のED治療薬はNGなのです。
その多くは、偽造品や出所不明品であることに注意を払わなければなりません。
過去最高水準となった「差押さえ」件数
“運び屋”を介して日本国内に持ち込まれる偽造医薬品は過去最高の水準に
それによると、名古屋税関は2013年1月に韓国人の“運び屋”から3種類計1万8154錠のED治療薬を押収。大阪税関は2013年10月に中国人の運び屋から2種類計1万8250錠を押収しています。
上記2件以外に、2013年10月時点で輸入差止め申立てによって差押さえられた件数は各社合わせて883件と過去最高です。2006年では年間31件であったことを考えると、状況は飛躍的に悪化していることがうかがえます。
1件あたりの錠数は多くないものの、小口化が進み、国内在庫を持たない販売形態が目立つのも最近の特徴です。この、国内在庫を持たない販売形態こそが、通販ルートで問題視される「個人輸入代行業者による販売」です。
結局は高くつく、通販経路の偽造品
インターネットを介した通販によるED治療薬が問題なのはまず、やり取りされる薬のほとんどが劣悪な製造環境でつくられている偽造品であることです。それらは命に関わる重大な健康被害を引き起こす可能性もはらんでいます。摘発された製造現場の多くは正規品の製造工程に比べて不衛生であるばかりでなく、流通経路全体を通じての品質管理もずさんです。含まれる成分が効かないだけでなく、副作用に対する保障が誰からも受けられないことも偽造品にひそむ大きな問題です。
簡単に手に入る、コストパフォーマンスが良い、といったことだけで通販品を安易に購入するのは禁物です。健康被害を受けたときの対処や治療などを考えれば、リスクは明らかでしょう。
使用者の9割以上は偽造品の流通を認識
「自分が購入したものだけは大丈夫」と過信する人が多いネット利用者
この調査は、ED治療薬の使用経験がある30歳以上の男性で、直近1年間でED治療薬を医療機関またはネットで購入した人を対象としたものです。上記の質問に対する結果は「偽造品の存在はネットでの購入経験の有無に関係なく認識されている」ことを示しています。
ただし「ネット上に出回っているED治療薬の偽造品の割合の認識」では、
・ 医療機関受診者=54.0%
・ ネット購入者=43.9%
という結果でした。
ネット上のED治療薬は偽造品であると思う割合が、医療機関受診者では半数以上だったのに対し、ネット購入者の認識の低さが浮き彫りになっています。
ネット購入者に対して、「直近で購入したED治療薬が本物だと思うか」という問いでは、
・ はい=79.3%
・ いいえ=20.7%
と、約8割が、購入したものは本物であると思っていることがわかりました。
つまり、自分が利用しているサイトの安全性を過信しているわけです。
ネット購入者の約4割は健康被害に無関心
「ED治療薬の偽造品で健康被害が出ると思うか」では、ネット購入者と医療機関受診者で認識の差が出ました。ネット購入者は、
・ 非常にそう思う=4.0%
・ そう思う=14.5%
・ まあそう思う=43.8%
・ どちらとも言えない=27.2%
・ あまり思わない=9.1%
・ そう思わない=1.4%
・ まったくそう思わない=0.0%
医療機関受診者は、
・ 非常にそう思う=21.5%
・ そう思う=33.7%
・ まあそう思う=22.6%
・ どちらとも言えない=15.6%
・ あまり思わない=4.2%
・ そう思わない=1.4%
・ まったくそう思わない=1.0%
これを「非常にそう思う+そう思う+まあそう思う」の合計で比較すると、
・ ネット購入者=62.3%
・ 医療機関受診者=77.8%
となります。
つまり、ネット購入者の約4割が、偽造品による健康被害のリスクを認識せずに薬を使用しているということです。
ここまで見てきたように、インターネットを介した通販によるED治療薬の最大の問題点は、健康被害の恐れが極めて高いことです。
一時の受診の恥ずかしさと、自分の命のどちらを重く見るかは言うまでもありません。ED治療薬は信頼できる病院やクリニックを受診して処方されたものを使うようにしましょう。
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