アベノミクスでマンションが値上がりする可能性
では、本題に入ろう。アベノミクスが与えた影響は、じつに多大。その可能性を4つの現象と1つの推察に分けて解説する。まず、ひとつは「価格先高観」である。インフレが実現すれば、間違いなく不動産は値上がりする。だから、その前に買っておこうとする需要が湧く。先日「6年ぶりに3大都市圏が上昇」と発表された公示地価からもトレンドは鮮明だ。しかし成熟社会においては、すべての場所が上昇することは考えにくく、立地は限定されるだろう。
次に、「金利先高観」が挙げられる。インフレの影響として、住宅購入においては物価よりも金利上昇によるインパクトが大きいことは(借入額にもよるが)容易に判断が付くだろう。現にモデルルームを取材していて、この理由を集客好調の第一に挙げるデベ(具体的には所長)が少なくなかった。とくに「高収入で保守的な思考の顧客」割合が高いエリアにおいては。
3番目に「税制改正・優遇」がある。アベノミクスとは直接関係しないが、個人の資産を子や孫の世代に継承するねらいで「相続税の改正(2015年)」や「住宅購入資金を目的とする贈与税非課税」、さらに消費増税対策としての「住宅ローン控除拡充」や「住まい給付金」は、大いに住宅市場のカンフル剤になり、4月以降も奏功しそうである。
4番目に「エリアの明確化」を挙げよう。東京五輪2020、総合特区制度は「ねらい目の具現化」に役立っている。これまでは「都心の好立地」「再開発」「駅近」など長らく使い古されたキーワードしかなかったものが、市場に新たな軸をもたらした。ゾーンごとの強弱が鮮明になりつつある。
最後に、これは推察の域を出ないが「供給戸数次第で相場が大きく動く」恐れがあるということ。ミニバブル時(2007年前後)「売り惜しみ」なる現象があったのを覚えているだろうか。8万戸供給では、需要が旺盛なうちに売りさばこうと売り手は躍起になるが、4万戸レベルとなると話は別(下のグラフ参照)。一旦は供給増を引き起こした(2013年)が、それでも市況が良いと見ると売り急ぎを避ける恐れが出てくる。値上がりが大きい23区は、すでに前年1.6倍強の市場膨張が見られた(右上のグラフ参照)。二極化が加速しそうだ。
不動産経済研究所が発表した2月度の首都圏マンション市場動向によれば、初月契約率は好不調の目安(70%)を大きく上回る80.6%。一方、供給は24.1%減。価格は18.1%上昇している。この傾向が続けば、留意すべきは人気立地の急騰ということになる。
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