パブリック・アートのいま
次にご紹介するのは、新幹線が停車する日本最北端の駅として知られる新青森駅にあるモニュメントです。このモニュメントを手掛けたのは、まだ30代のアーティストの中西信洋さんです。中西さんは、毎日同じ景色を撮影した写真を拡大してフィルム状にし、大きなスライドのようにして天井から吊る《Layer Drawing》シリーズのように、展示会場を歩きながら作品を鑑賞することで「時間」や「空間」を意識するようなものを発表しています。
この《Aomori Reflection》はタイトルが示す通り、鏡の面に青森の景色、私たちの姿が投影されています。
「空や、木、雪など周りの風景を映し込む作品です。季節、天気、時間ごとの変化を見てもらえるとうれしく思います」。(中西さん)
アルファベットのCが組み合わさったような形は、中に入ると壁に取り囲まれているような感覚になります。こんな大きいもの、中西さんひとりでつくったのでしょうか?どうやってできたのでしょうか?
コンセプトが書き込んであるドロ ーイング(絵)
駅前のモニュメント制作だけでなく、現代アートの、特に大きな作品を制作する場合、アーティストは作品のアイデアやコンセプトを考えるだけで、職人や業者に任せて実際の形にしていく、ということも多く見受けられます。
設置のようす
特に見どころは、この線描。中西さんの作品シリーズのひとつ、《Stripe Drawing 》があしらわれています。
この線は何だろう?と見上げてください。モノとして作品を見るのではなく、全身で作品を体感すること、空間を感じ取ることをしてほしい、という中西さんの思いの通り、カーブに沿って見ていると、右へ左へ、見上げたり、手を広げて見たり、と自然に身体が動きます。目だけではなく、体や他の五感で味わうことも現代アートの楽しみ方です。しかも駅前でできるなんて、ユニークですよね。