子供の病気

思春期早発症の診断・原因・治療

子どもから大人になっていく時期を、思春期と言い、体に様々な変化が見られます。その変化が年齢の割に早い場合を思春期早発症と言います。男性と女性と異なってくるこの思春期早発症について、ご説明いたします。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

思春期早発症とは

人は子どもから大人になる時に、大きく変化する時期があります。1次性徴と2次性徴です。1次性徴は体内で起こるもので、精巣や卵巣が形成されることを言います。2次性徴は精巣、卵巣、子宮、乳房など生殖能力を獲得していくことを言います。この時期を思春期と呼びます。女子では10歳頃、男子では12歳頃より思春期の特徴がはっきりしてきます。これらは脳の部分と生殖器の部分で、性ホルモンの影響を受けます。

こういった変化が通常より2~3年程度早く始まってしまう状態を、「思春期早発症」と言います。さまざまな原因によって脳の部分(間脳、下垂体)と生殖器(性腺)のシステムが早期に成熟して、性ホルモンが増加し、2次性徴が異常に早く出現した状態です。

思春期早発症の原因

原因は様々です。女性の場合、原因不明の「特発性」と呼ばれる症例が多いと言われています。男性では、脳腫瘍などの腫瘍や薬剤などの「器質性」と呼ばれる原因が多いです。てんかん、知能障害、脳性麻痺などの脳疾患でも思春期早発症が起こると言われています。

思春期早発症の症状

思春期

7歳6カ月より前に乳房がふくらんできた

女性に多い特発性思春期早発症では、
  • 7歳6ヵ月より前に乳房がふくらんで発育
  • 8歳より前に陰毛が生えてくる
  • 10歳6ヵ月より前に初潮(初めて月経がくること)
などの症状です。

男性の場合
  • 9歳より前に精巣の大きさが3-4 ml以上になる
  • 10歳より前に陰毛が生えてくる
  • 11歳より前にひげがはえたり、声変わりする
などの症状です。これらの症状が出た時には、検査をお勧めします。

性ホルモンに関わる脳は下垂体です。下垂体の腫瘍が思春期早発症の原因となっていることもあります。その場合、頭痛や物が二重に見える複視などがあり、このような症状にも注意が必要です。

さらに思春期早発によって、身長が伸びる期間が短縮され、低身長になる可能性があります。

思春期早発症の検査

血液検査で、血液中の性ホルモンに関わるホルモンを測定します。脳の中にある視床下部という部分から産生されるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が下垂体に働き、下垂体からは精巣・卵巣を刺激する黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)が産生されます。これが精巣に働いてテストステロン(男性ホルモン)、卵巣に働いてエストロゲン(女性ホルモン)が産生されます。このテストステロンとエストゲンが思春期に関わるホルモンです。さらに女性の乳房については、下垂体からプロラクチン(PRL)が産生されます。胎盤で産生されるhCGが腫瘍などから産生され、思春期が誘導されます。

そのため、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、テストステロン(男性ホルモン)、エストロゲン(女性ホルモン)、hCGを測定します。

下垂体に腫瘍が疑われる場合は、頭部MRIを行います。また、超音波検査によって、乳房の発育に伴い、乳腺が大きくなっているのか、腫瘍が無いかどうかを検査します。

思春期早発症の治療

まずは原因を検査し、それに合わせた治療を行います。特に下垂体腫瘍がある場合は切除が行われます。

思春期が早く来たといっても、徐々に2次性徴が進む場合もあるので、思春期早発症だからといって治療しなければならないわけではありません。

特発性の場合は、黄体化ホルモン放出ホルモン(LH-RH)と似た薬物のLH-RHアナログという薬を使うことで、下垂体からの黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の産生を抑えます。そのことで、テストステロン(男性ホルモン)、エストロゲン(女性ホルモン)を抑制します。注射薬で、4週間に1回注射を医療機関で行うことになります(自己注射は現在では認められていません)。これによって思春期の進行が遅くなり、骨の成長・伸びもゆっくりとなります。成長期間が長くなることで、ある程度の身長が期待されます。

治療が必要かどうかについては、血液検査などを総合的に判断し、投与量や投与期間を身長、体重、血液検査、性ホルモンの変化、骨の成長などを考えて行う必要があります。


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