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病児保育の基礎知識と現状

保育園に通園していると、集団生活のため様々な感染症に罹ってしまいます。そんな時でも仕事が休めない人のためにあるのが「病児保育」です。各所で保育園が足りず、それによる待機児童が問題になっていますが、現状はこの「病児保育」も不足しています。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

保育園に預ける前に受けておきたいワクチン

保育

保育園に預ける前にはできれば、予防接種は済ませておきたいものです

保育園では集団生活により、いったん感染症が流行すると、集団的に罹ってしまうことが多いです。

ワクチンで防げる下記の病気については、接種可能であれば、保育園に通園する前にワクチンを受けておきたいものです。
  • 麻疹
  • 風疹
  • おたふくかぜ
  • 水ぼうそう
  • インフルエンザ桿菌(Hib)
  • 肺炎球菌
  • ジフテリア
  • 破傷風
  • 百日咳
  • ポリオ
  • インフルエンザ
  • B型肝炎
  • ロタウイルス性胃腸炎
特に、現時点では自費になっていますが「おたふくかぜ」と「B型肝炎」、まもなく公費になるといえ、今から通園するなら「水ぼうそう」も接種したほうが良いでしょう。また、年齢が小さい場合は「ロタウイルスワクチン」もできれば接種しましょう。

予防接種・ワクチン

とはいえ、すべてがワクチンで防げるわけではありません。例えば、風邪を起こすウイルスについてはワクチンがありませんし、「ノロウイルス」、「RSウイルス」についてもワクチンがありません。

病児保育とは?

病気になった時に、子どもを預かってくれるのが病児保育です。保護者の就労支援のための託児事業ではなく、あくまでも病気の子どもの育児支援としてのセーフティネットです。子どもの健康と幸せを守るため、たまたま病気である子どもでも世話をすると言う考え方で病児保育が始まっています。

1966年、東京都世田谷区のナオミ保育園で保育園に通う保護者の共済制度として、保育園内に病児保育施設ができたのが最初です。その後1991年に全国病児保育協議会が14施設で設立されました。1995年に「乳幼児健康支援デイサービス事業」として国の事業になり、2007年には「病児・病後児保育事業」となっています。病児保育施設は国からの補助を受けており、2011年には全国1026か所にできました。

全国病児保育協議会

病児保育には対象と形態による分類があります。
  • 病児対応型…病気の急性期から回復期までの病児で、処置などが不要である児を対象にしていて、医療機関に併設されていることが多いです。医師の回診、病気の急変時にも対応していることが多いです。約半数がこのタイプです。
  • 病後児対応型…病気の回復期の病児だけを預かりますので、医師の回診などは無く、保育園に併設されていることが多いです。
  • 派遣型…資格を持った保育士が子どもの自宅で預かるタイプで、最近、徐々に行われています。
です。

さらにその形態から
  • 医療機関併設
  • 保育園併設
  • 乳児院併設
  • 単独型
に分かれます。

全国病児保育協議会では、病児保育専門士という資格制度も開設しています。
病児保育施設で2年以上勤務した保育士、看護師を対象に、救急実習を含めた22時間の講義、小論文の提出と面接で、合否が判定されます。

病児保育の現状

意見書

利用する時には医師の意見書が必要です

受け入れ年齢は0歳から小学校低学年までで、定員は4名から6名の施設が多いです。利用時間は8:00~18:00が多いですが、一部の施設では延長も可能なようです。

自治体にもよりますが、事前に登録する必要があります。

施設の運営には国、都道府県、市町村からの補助金があり、利用者の自己負担は2,000円から3,000円で、所得に応じて1,000円前後の場合もあります。

また、病児3名に対して保育士が1名が見るというサービスの仕組みですので、どうしても小規模になります。2010年度までは病児2名に対して保育士1名でした。
病児であるために手厚い保育が必要になりますから、緩和が良いのか悪いかは難しい所です。

利用するためには病児であることが必要ですので、利用前日あるいは当日に、医師の診察と意見が必要になります。

病児保育の問題点

子育て支援として必要な事業ですが、病児保育事業の多くは経営としては赤字です。その原因としては配置職員の確保です。保育園自体が不足している状況ですから、なおさらその確保が難しいことと、病児を保育するという特殊性から、専門的な知識も必要となります。

小児科医をしているガイドとしては、小児科の疾患には季節変動があるように思います。一般的に冬は多忙期に入り、夏は比較的少なくなります。

病児保育の利用数は、季節変動とキャンセルの問題があります。利用者は風邪程度であれば、保育園にそのまま預けることになりますが、病児保育は感染力の強いインフルエンザ、おたふくかぜ、水痘、などにかかった時に利用されますから、インフルエンザの非流行期では利用が少ない状況になります。そのため保育士を常時、安定雇用しても、利用者がゼロの日もあります。当日子どもが元気になれば、キャンセルもありえます。

病児保育はいざという時には良いのですが、常に利用があるわけでないため、経営と言う点では難しく、共済的な事業形態でなければ継続は難しいのではないかと考えます。会費制にして、利用しなくても費用を払い、利用時は安く利用できる、全く利用しなかった人には一部償還する、または利用回数に応じた会費の差別化などが必要になりそうです。また、実際にそのようにしている病児保育もあるようです。

基本的には利用者による負担を原則として、子育て支援をしていく形になるのでしょう。


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