頬骨骨折とは?
頬骨は顔面中央の頬の部分の骨です。頬には多数の骨が連続しているので、骨折の場合、個々の骨の名前を呼ぶのでなく頬骨骨折と呼びます。
横からみても頬骨は連続して周りの骨と連続しています。
前頭骨、蝶形骨、篩骨、上顎骨、蝶形骨、側頭骨など様々な骨が連続して頬を構成しているので、頬のどの部位が骨折しても頬骨骨折と呼びます。
<目次>
頬骨骨折の分類
- 頬骨弓骨折…頬骨弓が折れたもの
- 頬骨体部骨折…頬骨弓以外が折れたもの
- 頬骨体部及び弓部骨折…頬骨体部と弓部両方折れているもの
頬骨骨折が多い年齢・性差
運動、事故などに伴い発生する骨折ですので、あらゆる年齢層に発生します。一般の人にも発生しますし、ラグビー、バスケットボール、野球、格闘技などのスポーツ選手などでもみられます。男性に多い骨折ですが、女性にも発生します。頬骨骨折の症状
■顔面の変形顔面の変形が生じます。これが主たる症状となることが多いです。
通常外力が働いた部分がくぼみます。
■腫れ・皮下出血等
骨折部位の周辺の腫脹、疼痛、皮下出血、複視などが発生します。「眼窩骨折・吹き抜け骨折」と同じ理由で主として上方視で複視が発生します。
骨折した右目の上方視が制限され物が二重に見えます。複視という症状です。
■知覚麻痺
顔の中央部分(頬、口腔粘膜、歯肉、鼻)の知覚麻痺も発生することがあります。三叉神経の枝である下眼窩神経の障害です。
下眼窩神経が骨折により圧迫されて知覚麻痺が発生します。
典型的な症状としては歯を磨いたときに違和感(歯肉に歯の麻酔を注射したときの麻痺状態)がはっきりします。
■開口障害
開口障害といって口をあけることが難しくなります。指2本ほどしか口にくわえることが難しくなります。このメカニズムは少し難しいのですが、骨折して後方に移動した頬骨弓ないし頬骨体部が下顎骨の筋突起という部分を圧迫することにより、顎関節の可動性が低下します。
頬骨弓部ないし体部が後方に移動し筋突起を圧迫します。
疼痛で開口障害が少し発生しますので、痛みが軽減しても開口障害が残った場合手術が必要となります。
頬骨骨折の検査・診断法
■単純X線単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明を受けられるので、必ず施行します。
顔面単純X線。骨折が診断可能です。
顔面骨X線軸位像。頬骨弓の診断が可能です。
単純X線では上顎洞に貯留した血液がわかることがあります。
■CT
単純X線で診断がつかない場合でもCTであれば診断可能です。
顔面単純CT画像。骨折の診断が正確に可能です。
■3DCT
CTの画像データをコンピューターで計算して3次元の画像を表示することが可能です。
3DCT画像
頬骨骨折の治療法・手術方法
顔面の変形、複視、知覚麻痺、開口障害がない場合、特別な治療は必要ありません。頬骨骨折の治療として保存療法、手術療法の2つの治療法があります。■保存治療
・眼球運動練習
具体的には5円玉を顔の正面に紐で吊るして、左右前後に往復運動させ、顔を固定したまま、目で5円玉の運動を追います。この運動をしばらく続けると複視が改善、消失します。
・開口練習
注射器などの太さのものを口の中に入れる練習を繰り返し、サイズを徐々に大きくしてゆきます。
・神経再生薬
メチコバール ビタミンB12…障害された神経の修復を促進させる作用を持ちます。1錠21.1円で1日3回服用します。後発薬では5.6円のものが複数あります。4週間の服用で64%の改善率があります。副作用ですが、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、発疹などがあります。
■手術治療・手術方法
2週間程度眼球運動練習、開口練習を行っても複視、開口障害が改善しない場合、手術が必要となります。知覚麻痺の場合、慎重に手術の適応を判断します。顔面の変形は保存的には改善が見込めませんので変形が気になる場合手術が必要となります。
手術は観血的整復固定術といい、骨折した骨片を元の位置に戻し、必要があれば固定します。頬骨周辺の骨は薄いため、この作業をおこなうと骨欠損が生じる可能性が高く、欠損により眼球の位置が 安定しない場合なんらかの医療材料で骨欠損を再建します。再建材料として、骨移植、軟骨移植、チタン、吸収性プレート(人体の中で分解され吸収されてしまうプラスチック)などがあります。
それぞれ利点、欠点があります。手術する形成外科医と相談の上手術方法を決めて下さい。
骨折を整復し金属のプレートとメッシュで骨固定を施行しました。
金属のチタンで骨欠損を再建しました。
頬骨骨折観血的整復固定術をうけた術後の状態です。