その先の大舞台へ向けて……
出走権を賭けて戦う「トライアルレース」
3月時点での競走馬は、レースにおいて3歳と4歳以上のカテゴリに分かれています。4歳以上の「オトナ馬」に対し、3歳馬はまだまだ子ども。そのため牡馬(オス)なら、G1皐月賞(芝2000m、中山競馬場)、牝馬(メス)ならG1桜花賞(芝1600m、阪神競馬場)という、同世代限定のG1レースを目指します。2レースとも4月に行われます。そしてさらにその先、5月~6月頭には、牡馬ならG1日本ダービー(芝2400m、東京競馬場)、牝馬ならG1オークス(芝2400m、東京競馬場)という、同世代決戦の頂点が待っているわけです。
そんな3歳馬にとって、3月はトライアルレースの時期。トライアルレースとは、そのレースで○着以上になれば、皐月賞・桜花賞の優先出走権が得られるというものです。
皐月賞・桜花賞ともに、出走できるのは18頭まで。その18頭を決める上で、トライアルの権利が最優先となります。そのため皐月賞・桜花賞を狙う馬の多くは、ここで出走権の確保を狙います。
皐月賞・桜花賞のトライアルレースと、優先出走権が与えられる着順は以下の通りです。
【皐月賞トライアル】
G2弥生賞(芝2000m、中山競馬場)⇒3着以内
OP若葉ステークス(芝2000m、阪神競馬場)⇒2着以内
G2スプリングステークス(芝1800m、中山競馬場)⇒3着以内
【桜花賞トライアル】
G3チューリップ賞(芝1600m、阪神競馬場)⇒3着以内
OPアネモネステークス(芝1600m、阪神競馬場)⇒2着以内
G2フィリーズレビュー(芝1400m、阪神競馬場)⇒3着以内
※「OP」とは、重賞ランクではない「オープンレース」を意味します。
これらのレースが一ヶ月のうちに行われ、皐月賞・桜花賞それぞれ8頭分の出走枠が埋まっていきます。残りの出走枠は、大まかにいえば各馬の獲得賞金順で決まっていきますが、この時期の3歳馬はまだデビューから数戦しかしておらず、この時点で高額の賞金を稼いでいるのはほんの一握り。多くの馬たちは、このトライアルで出走権を狙います。
権利を取れるかが、その馬の運命を変えることも
どんなに才能のある馬でも、賞金がない以上は、トライアルで権利を取らないと大目標の皐月賞や桜花賞に出ることさえ叶いません。そのため、トライアルは独特の緊張感で埋め尽くされます。何より、競馬はレース展開一つで勝敗が変わるスポーツ。だからこそ、たとえトライアルで3着でも、出走権さえ確保できれば本番で逆転できる可能性は十分あるのです。勝つことが大切なのはどのレースも共通ですが、トライアルに関しては「2着・3着までに入りたい」という心理も強く働きます。そこで起こる駆け引きも見どころ。勝つために大胆なレースをするよりも、「大きく負けないためのレース運び」に徹するケースも出てきます。この辺りはまさに騎手の腕の見せ所といえるでしょう。
出走権を賭けて若者がしのぎを削る姿は、さながら箱根駅伝の予選会。あるいは高校野球の県大会といってもいいでしょう。出場するまでにも、大きな苦労がある。皐月賞や桜花賞などの「同世代決戦」には、そのような道のりがあるのです。
4月に行われる皐月賞と桜花賞。その舞台へ向けて、熱き戦いが繰り広げられる3月のトライアルレースをぜひ楽しんでもらえればと思います。
※レースの情報は、すべて2014年2月末時点のものです。
(リンク)
3月のレーシングカレンダー|JRAウェブサイト
高松宮記念 歴代勝ち馬|JRAウェブサイト|データファイル
高松宮記念 歴代優勝馬ピックアップ ショウナンカンプ|JRA-VAN