物をターゲットにする/ターゲットゲーム
このように、手だけではなく、物に対してターゲティングすることもできるのです。例えば、ドアのチャイムが鳴ったら自分のベッドに行くという行動を教えることも可能になりますし、もう少し高度になると、庭でトイレをするコの場合、ベルを吊るしておいて、前足や鼻でベルに触れることをターゲティングしておき、その後、トイレに出す前に必ずベルを鳴らさせてから庭に出す、というトレーニングを繰り返すと、「トイレに行きたくなったらベルを鳴らす」という行動を教えることも可能になります。
工夫と想像力次第で、いろいろなシーンに応用できるのがターゲット・トレーニングなのです。
怖がりなコの恐怖軽減にも
「アメリカの動物園では、“そこに留まる”というステイショニングにこのターゲット・トレーニングが取り入れられたりしています。この手法を用いて、コンパニオンアニマルにも診察時に診察台の上でじっとしていることを教えることもできます。その際には、ハンドターゲットや、棒の先をターゲットにするのが最も簡単かと思いますが」(山田さん)その他、バイクが怖いコであれば、最初のうちはバイクとの距離をとり、人が犬とバイクとの間に立って、ターゲットに集中させ、段階を踏みながら少しずつバイクとの距離を縮めていきます。バイクを見ただけでクリック、少し距離が近づくことでクリック……と繰り返すことで、逆に怖いと感じる対象そのものをターゲットにすり替えていくことも可能だそうです。
「場合によっては、恐怖であるものが、興味の対象に変わっていくこともあります。犬の視点が変わり、それまで不安を抱えていた犬に自信を持たせてあげることができるのです。例え不安を感じる環境にあっても、ターゲットという集中できるものがあることによって、恐怖を軽減することができる、ということです。ことターゲットが飼い主の手であるなら、犬は一番安心できますものね」(山田さん)
ターゲット・トレーニングのポイントと注意点
ここで、ターゲット・トレーニングをする際のポイントと注意点について少し触れておきましょう。スキルとして大切なことは、クリッカーを慣らすタイミングが重要であるということ。何度も言いますが、クリッカーは“その行動が正しい”と伝える合図です。同様にキューをつけるタイミングも大切だということは忘れないようにしてくださいね。段階を追ったステップを細かく考えていくことも大事です。そして、キューに対して、ターゲットの行動がきちんと出ているか確認することも忘れないように。
また、おやつ(ルアー)をご褒美として用いる場合、ルアーで行動を誘導しているのではないということを意識する必要があるでしょう。確かに、ルアーで犬の行動を誘導することはできますが、それは必ずしもその行動が強化されているということではありません。犬はルアーに集中しており、行動に集中しているわけではないからです。自分が何をやったらいいのか?ということも、恐らく考えることはできないでしょう。ですので、ルアーがなくなれば、その行動もしなくなってしまうことが考えられます。
そうではなく、集中させるべきはターゲット。犬がルアーに集中してしまっているような素振りが見られた時には、一度しきり直し、正しいポイントでクリッカーを2~3回鳴らし、「集中」がルアーと結びつかないようにする必要があります。
今回はここまで。特にハンドターゲットは応用の範囲も広いですし、楽しいものです。是非トライしてみてくださいね。
【関連記事】
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⇒クリッカートレーニング-3(キューのつけ方)
⇒クリッカートレーニング-4(シェイピングについて)
⇒クリッカートレーニング-6(エモーショナルシグナルについて)
⇒クリッカートレーニング-7(ターゲットスティック/ダウンを教える)
⇒クリッカートレーニング-8(ヒールワークを教える)
【関連サイト】
PRAISE TOUCH(『プレイズタッチ・パートナーズ』公式ウェッブサイト)
RICO’S CANINE MASSAGE SCHOOL(山田さんが主宰するスクールのサイト)
RICOSホームページ(山田さんの活動に共感された企業がRICOSブランドを展開)
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