前例を踏襲した商品企画
「パークタワー大崎 ザ タワー」の建物の特徴を3つに絞って抽出してみる。まず1点目は構造である。地震や風の揺れを低減させる制振構造を採用。角住戸と中住戸で梁の位置を違えている点にも注目したい。角ならではの眺望を享受し(順梁)、中住戸でも採光を最大化(逆梁アウトフレーム)するアイデアである。天井はやや高く、2.6mを確保(LD。最上階のみ3.0m)。2点目はファミリーをターゲットにしたマンションであること。キッズルームやスタディルーム、スカイデッキにゲストルーム、さらには屋外ガーデンと共用施設をふんだんに設け、コミュニティが形成されやすい物件に徹している。これは前例(「グランスカイ」)を踏襲したもので、実績から得た知見が商品企画に還元されている。
3点目は恵まれたロケーションと住戸割り。城南エリア屈指の住宅街「御殿山」を東サイドに、東京タワーを北方向に臨む。平面図を見れば各方角の利点を最大化させたことが一目瞭然である。例えば、北向きは一般的に面積を圧縮しがちだが、このマンションではワイドスパンで眺望を楽しめる広い空間(中層から上は80平米台)を確保している。なので駅近タワーのわりには、全体的に70~80平米台のシェアが高い。御殿山小学校隣接も大きな住戸割りを推進させた理由のひとつである。
当初予定より「半年早く完売!?」
「パークシティ大崎 ザ タワー」は2013年10月上旬にモデルルームを公開。9週間の集客期間を経て第1期一次は288戸を分譲、その後年内は第1期三次までの計3回の登録販売を実施、計349戸を売り出した。総来場数は約1,700件というから、歩留まり(来場者数に対する申込者の割合)は悪くない。分譲住戸の平均販売坪単価は@367万円である。今年に入って第2期一次~二次を行い、累計販売戸数は465戸に。総戸数734戸のうち、地権者住戸を除く販売対象住戸は566戸。つまり未発売住戸は残り100戸程度ということになる。
好調の最たる理由は「競合物件がないこと」(<パークシティ大崎 ザ タワー レジデンシャルサロン>所長大栗祐樹氏)。「JR山手線内側の大規模再開発。この地域が今後さらに整備される将来性を含め、利便と環境の両立、建物のスペックなどマイナス要素が見当たらないとご評価をいただいています」(同)。当初は年内いっぱいかけて完売することを想定していたようだが、「このペースでいけば夏前には終わるかも。半年近く前倒しで終了する可能性も十分あり得ると思っています」(同)。
下図は、当物件購入者の決め手をまとめたグラフ。最大でも12%(赤字)と特定の項目に偏っていないが、根底には「資産性を重視したい」思考が強いという。立地の利便性・将来性、駅近、大手物件などに魅かれたようだ。さて、この手の総合力が高い物件を購入するときは注意が要る。不動産の価値がより相対評価されていく成熟社会では、アピールポイントがわかりやすいことが理想。「売れた理由」を漠然とではなく、それが資産価値そのものと捉えたい。
画像ならびにデータ出典:三井不動産レジデンシャル
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