NISSAN(日産)/日産の車種情報・試乗レビュー

新型ティアナから見える日産の笑えない内部事情

フルモデルチェンジしたティアナ。スタイリッシュで広いキャビンスペースを持ったミドルクラスセダンで、フル装備車で242万9700円からと普通に考えれば魅力的な存在のはずなのだが、同車には決定的な弱点がある。その弱点とは、日産独自の社内システムに起因しているようだ。

国沢 光宏

執筆者:国沢 光宏

車ガイド

出た瞬間から時代遅れ?その原因は社内システムにあり

先祖をローレルとする日産ティアナがフルモデルチェンジをした。2.5リッター4気筒エンジンを搭載するスタイリッシュなFFのアッパーミドルクラスセダンで、広いキャビンスペースを持つ。しかも価格はフル装備車で242万9700円より。普通に考えれば魅力的な存在である。
新型ティアナ

なかなか魅力的なはずの新型ティアナだが……

しかし! 新型ティアナには決定的な弱点がある。イマドキのクルマとしちゃ考えられないことに、アイドルストップが付いていないのだ。加えて常識的な装備となりつつある自動ブレーキも無し。こうなるとファミリカーというより、タクシーなど営業用のクルマというイメージ。

なんで出た瞬間から古くなってしまうようなクルマになったのか? こらもう簡単。日産独自の「コミットメント」(約束)という社内システムによるものだ。こいつは企画担当者が会社に対し「何台売ります」という約束をして、達成出来なければ落第点を貰っちゃうというもの。

御存知の通りクルマの価格は販売目標台数によって大きく変わる。例えばティアナに自動ブレーキを付けるとしよう。自動ブレーキの開発には当然ながらお金が掛かる。ただ販売台数が多ければ、量産効果により適切な販売価格に抑えることができる。普通、このクラスなら月間販売目標1000台程度か。

なのにティアナの担当者は「そんなに売れない」と考えたんだろう。520台という驚くほど少ない台数に設定してきた。ここからが本題。520台だと年間でも6000台少々と少ない。マイナーチェンジまで2年間とすれば、1万2000台。この台数だと自動ブレーキを付けることなど無理。

“収益効率”で考えると正しいのかもしれないが……

同じようにアイドルストップを付けようとすれば、エンジン本体だけで無く変速機や電気系統まで開発しなければならない。これまた1万2000台だと無理。いや、付けられるものの、10万円以上の価格上乗せになってしまう。だったら自動ブレーキもアイドルストップも省いて安くしましょう、というワケ。

収益効率という点では正しいシステムなんだろう。けれど結果として魅力無いクルマになってしまい、520台すら売れない可能性が出てくる。少なくとも友人や知人だけでなく、オールアバウトを読んでいる方にもおすすめできない。明らかに時代遅れのクルマですから。

新型エクストレイルにディーゼルエンジンを設定しなかったことや、今やライバルが全て自動ブレーキを選べるようにしている中、日産の軽自動車だけ設定がないのも同じ理由。開発にコストがかかるからだ。現在、日産のクルマは全てコミットメント制になっているため、今後もこの状況は続くだろう。

ちなみに新型スカイラインの月間販売目標台数なんと200台! 2年間で5000台に達しないから驚く。この台数だと日本専用の装備を持たせることなど不可能に近い。コミットメントというシステムを継続している限り、日産から大ヒットする車種は出てきにくいと考えます。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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