冬眠前のワクワクする気持ちを抑えられないコグマ
『はるはいったい いつくるの?』
冬眠しているクマは、冬の間ずっと目を覚まさず眠りっ放し? 絵本『はるはいったいいつくるの?』には、冬に入る前から春が待ち遠しくてたまらなくて、なかなか寝付けないばかりか、眠っても何度も起きてしまうコグマのアルフィーが登場します。そんなアルフィーは、冬景色の中に色々な春を見つけます。
冬景色の中に見た色々な春
「おいで アルフィー、とうみんしましょう。目がさめたら はるですよ」。赤、黄、緑、色鮮やかな秋の落ち葉で遊んでいたアルフィーに、かあさんグマが巣の中から優しく声をかけました。アルフィーにとって、初めて経験する冬。そして見たことのない春の景色。「はるって なに?」「はるって いつくるの?」と好奇心でいっぱいになったアルフィーは、かあさんグマの腕に抱かれて眠りに落ちたものの、すぐ目を覚ましてしまいます。チョウチョに見えたものは、降り始めた初雪でした。木にたくさんの鳥がとまっているように見えたのは、枯葉と枝から伸びるつららでした。温かなお日さまの陽射しに見えたものは!? 動物にとって恐ろしいものでした……。
アルフィーは、春が来たと思い込むたびにかあさんグマのことも起こします。冬眠中にこんなに何度も起きてしまって、アルフィーもかあさんグマも大丈夫かなと、少し心配になりますが、山の冬はとても長いのです。親子グマは次第に深い眠りに落ちていったようです。
「なかなか寝付けない」その思い
私はこの絵本を読んで、なかなか寝付けないアルフィーに、毎晩なかなか寝ようとしない我が家の子どもたちを重ね合わせてしまいました。日中も体を思いっきり動かして活動している子どもたちは、夜の21時近くなれば眠くなってきているはず。それなのに、なんだかんだと理由をつけて、なかなか布団に入ろうとしません。皆さんのお宅でも、ありませんか?アルフィーの様子を見て、ふと思いました。子どもたちには「明日」に対する期待と不安が毎日毎日わき上がってくるのかな? 「こんなことをしよう。あんなこともできたらいいな」という期待や、「どんな1日になるのかな?」という小さな不安……。子どもにとっての毎日は、たくさんの「初めて」にあふれています。初めての冬を迎え、見たことのない春を心待ちにして落ち着かないアルフィーの様子に、そんな気持ちにさせられました。
短いお話から伝わってくるかあさんグマの優しさに心が和み、子どもをひざの上にのせて温もりを感じながら読みたくなるような絵本です。やがて、絵本の中に美しい春が訪れます。明るい空を少しまぶしそうに見上げるかあさんグマ。そしてアルフィーは、どんな表情で待ちわびた春を迎えたのでしょうか!? 思わずクスッと笑ってしまう、春にぴったりのラストが待っていますよ。