算数の素地を作る? かずあそびの絵本『ウラパン・オコサ』
数を数える「かずあそび」の絵本といわれると、大人には下心がムクムクと湧き上がってきます。「この絵本をきっかけに、算数に興味を持ってくれるといいなあ……」なんてことが、チラッと頭をかすめますね。でも、この作品に限っては、そんなことを考えるのは無意味というものです。なぜなら、この絵本は、そんなちっぽけな大人の願いとは比べ物にならないほど、大きな贈り物をもたらしてくれるのですから……。1はウラパン、2はオコサ、さあ楽しい「かずあそび」を始めよう!
楽しい「かずあそび」のルールは、たったの2つ。1つ目は、1をウラパン、2をオコサとよび、ウラパンとオコサだけで数えていくこと。2つ目のルールは、数が増えてきたら、オコサを先に数えて、残りはウラパンにすること。シンプルなルールに従って、色々なものの数を数えていきます。「さるが1ぴきでウラパン バナナが2ほんでオコサ」です。野原にはヤギが5頭……オコサ・オコサ・ウラパンという訳です。数が大きくなればなるほど、読み手はもう大変で、ほとんど早口言葉のような状態になります。聞いている子どもたちだって、読み手に負けじと大きな声で、オコサ・オコサ・オコサ・オコサ……と始まりますから、今数えているのは、いったいぜんたい、いくつなんだか、頭がこんがらがってきます。
いやいや、もうちょっと落ち着いて読まなければ……と思った瞬間、ひらめきました。「これって、2進法にそっくりだ!」そうなんです。算数に興味を持つどころではなく、目の前の子どもたちは、知らず知らずのうちに、しっかり2進法のしくみを理解して、2進法で遊んでいるのですから驚きです。
そして、この絵本を読んでいると、もう1つ気付くことがあります。それは、大勢でこの絵本を見ている時の子どもたちの態度に関することです。他の本を読む時は、静かに聞き入る子どもたちが、この絵本の場合は、子どもたちみんなで、我先にと競争したり、わからない子に教えてあげたり、助け合ったりするのです。その様子はまるで、絵本を通じて集団生活の楽しさを体現しているかのようです。この経験こそ、子どもたちにとって、2進法の理解以上に大切な、絵本からの贈り物ではないでしょうか。
【書籍DATA】
谷川晃一:作
価格:1365円
出版社:童心社
推奨年齢:4歳くらいから
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