歯科インプラント治療において、最も重要なインプラント体を埋め込む手術。インプラント手術では歯肉を切開剥離し歯槽骨を露出させ歯科インプラントを適切な位置に埋入します。3DCTで3次元データを用いると、事前にかなり詳細な情報を得ることができますから、術後の痛みや腫れを少なくする低侵襲な手術も可能になりました。歯科インプラント手術には大きく分けると「一回法」と「二回法」があります。それぞれがどのような目的で使い分けされており、メリットとデメリットは何なのか、また自分のケースにはどちらが適切なのかなどを簡単に解説したいと思います。

一回法インプラント手術

1回法手術の抜糸後

1回法で抜糸が終了した状態。このまま骨結合を待ち上部構造の製作に入る。

一回法とは、インプラント埋入後に厚めの仮蓋(延長ヒーリングキャップ)で固定し、歯肉から貫通させた状態で縫合する方法です。手術は1回で済みますし、インプラントが骨結合し歯肉が落ち着いたらそのまま上部構造の製作に入ることができます。それなら全ての歯科インプラントを一回法で行えばいいじゃないか!と思われるかもしれませんが、そうではありません。

インプラント治療を希望される方は、何らかの理由で歯を喪失しています。歯を失うにはそれなりの原因があり、大半は感染によるものです。歯周病、虫歯、根尖病巣などの細菌感染が原因である場合や、歯根が折れた場合などは保存不可能になります。そうすると、少なからず周囲組織(歯肉や歯槽骨)はダメージを受けていることが多く、多くの場合は何らかの骨造成が必要になります。骨造成を行った場合は、唾液からの感染を注意しなければなりません。一回法ですと貫通部がルーズになりやすく感染のリスクが高まる為、熟練したテクニックが必要不可欠になります。その場合は後に述べる二回法で手術を行った方が安全であるといえます。

二回法インプラント手術

歯肉で覆われた手術跡

骨造成が必要なケースは歯肉で完全に覆った方が感染リスクは減る

二回法とは、インプラント埋入後に薄い仮蓋(封鎖スクリュー)で固定し、歯肉で完全に覆う形で縫合します。その後、歯科インプラントが骨結合したら、簡単な小外科手術で最初に入れた小さな仮蓋を外し、厚めの仮蓋に変えて、歯肉から貫通させて縫合します。2度目の手術は大げさなものではなく、メスを使用せず、レーザーなどで行うこともあります。

現在多くの場合において二回法の手術を選ぶことが多くなっています。その理由は一回法の説明で述べたように、何らかの骨造成を行わなければならないインプラント埋入手術が大半になってきているからです。

一回法のメリット・二回法のメリット…インプラント手術の比較

結論としては、一回法がいいとか二回法がいいとかではなく、症例と術者のスキルで使い分けをしなければならないということです。症例に関してだけでも、一昔前と大きく変わってきています。昔は、抜歯して数年経過した部位にインプラントを入れる機会が大半でした。その場合、骨造成を行う機会は少ない為、一回法で対応できる症例も数多くありました。しかし現在では、抜歯して間もない状態で、場合によっては抜歯と同時にインプラントを入れることが多くなったので、かならず歯槽骨とインプラントに隙間が存在します。隙間は何らかの骨造成を行いますし、骨造成したらそれを露出させないようにしっかり縫合しなければなりません。

手術跡がルーズにならずに、動かない十分な歯肉を一回法で獲得するには卓越したテクニックが必要不可欠になります。なので、一回法は条件がそろった場合に行われることが増えてきました。その条件とは、「歯肉の厚みが十分にあり、骨造成を行わないか極少量で済むケース」また、「インプラントの初期固定が十分に獲得でき、歯肉貫通部に食物が当たってしまっても問題ないと思われるケース」その他細かな部分はいろいろありますが、こういった部分を十分チェックして可能であれば一回法という考え方がいいのではないかと思います。

当然使用するインプラントシステムにもそれぞれ特徴があります。一回法に不向きなものもあれば、一回法も二回法もどちらでも対応可能なシステムもあります。

低侵襲を求めるがあまり、安心・安全を後回しにしてしまってはいけません。あくまでも優先されるのは、安心・安全です。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。