梅の魅力
梅の小さな盆栽
梅と一口に言っても200種類以上の品種がありますが、盆栽ではおおまかに白梅(白系の花色)、紅梅(ピンク系の花色)、咲き分け(一本で紅白の花のどちらも咲くもの)を呼び分けて楽しみます。
写真は月影(つきかげ)という品種の梅の小さな盆栽です。高さは15cmもありません。手のひらで楽しむ梅のお花見です。
月影の花
月影の花は、きれいな五弁の花びらの付き方で、まさに「梅の花の形」です。雄しべの黄色い色味も美しく、清楚という言葉がぴったりです。
満月しだれ
こちらの写真は満月しだれという品種。名前に「満月」の文字があるように、花びらが正円に近く、写真のような苔玉仕立てにすると尚一層愛らしいですね。
ピンクの花が愛らしいしだれ梅
同じしだれ梅でもこちらは紅梅。緋の司(ひのつかさ)という品種。こちらも15cmに満たない大きさですが、風流なしだれ梅を楽しめます。私の盆栽園がある埼玉では、気温が低い2月に咲きますので、寒い季節に芳香と共に咲く姿には、毎年ながらとても勇気づけられるのが梅の最大の魅力ではないでしょうか。
梅にちなむ盆栽の歴史
実は盆栽の歴史の中で、梅は古株。梅の木そのものは、その昔、中国大陸から渡ってきました。では、ここで問題です。盆栽の歴史はどのくらい前まで遡るのでしょうか。
A:200年前
B:500年前
C:1000年前
ピンクの花が愛らしいしだれ梅
正解はCの1000年前です。中国の唐時代に楽しまれていた盆景(一鉢の中に、岩や複数の草木を寄せ植え楽しむもの)という園芸の形が日本に伝わり、その後一つの鉢の中の一本の木の姿で自然の景色を見立てる、という日本独特の盆栽の形に昇華されていきます。
ちなみに、梅の盆栽は、鎌倉時代に描かれた絵巻物にははっきりと描かれていますので、約900年前の人も同じように小さな鉢で梅見を楽しんでいたのです。
梅盆栽の育て方
花後に枝を剪定する
梅盆栽の育て方のポイントは、しっかり直射日光に当て、春の生長期と秋の成熟期に3か月間ずつ固形肥料をやること。また、水をとても好む木です。剪定については、「桜切るバカ、梅切らぬバカ」と言われますが、梅はどんどん伸びるので、剪定を花後と梅雨入り前までにします。ちなみに桜も同じように剪定します。
では、花後の剪定をどこまで切るのかご説明します。右の写真のように、花の終わった枝を枝元まで切ります。
枝元の芽の上で剪定します
枝元の寄りの写真がこちら。ハサミの刃の下に、茶色の小さな芽があるのがお分かりになりますか? 茶色の小さな芽が芽吹くと、葉が出てきて新しい枝になります。その後、その伸びた新しい枝を5月末には剪定して形を整えると、毎年小さなサイズの盆栽でも花を楽しめるという流れです。
盆栽は手をかけた分、枝数が増えたり、花や実を楽しめたりしますね。梅も愛情をかけた分だけ花が楽しめますので、ぜひ歴史も長く清楚な梅の花盆栽を楽しんでみてください。
【関連記事】
小さな盆栽の作り方(苗の下準備や根の処理)
小さな盆栽の作り方(植込みから完成まで)