手続き業務の実際
社労士業務を未経験で開業する方の場合、書籍や事務指定講習・開業セミナー等による知識だけで実務に臨むことになりますが、書籍等だけでもある程度の書類作成は可能ですので、それほど心配しなくても大丈夫です。但し、最初のうちはどんな書類でも、役所に確認を取りながら作成した方が無難です。基本的なことだからと躊躇せず、分からないことは必ず電話などをして聞いて下さい。簡単な書類だと思ったものでも、実務では独特の書き方があったり、書籍等では教えてくれない添付書類が求められることがあります。
また、役所に聞きにくいことも出てきたりしますので、社労士会などで何でも相談できる先輩社労士を見付けておくのもよいですね。とにかく、後でお客様に迷惑をかけることがないように気を付けましょう。
また、企業から労働・社会保険手続きの仕事を受けた場合には、企業の担当者と手続きに必要な情報をやり取りしたうえで、社会保険労務士が書類を作成し、窓口となる役所に提出します。このため、社会保険労務士には、手続きを正確に行う知識だけでなく、対人的なコミュニケーション能力も求められます。
企業から労働・社会保険手続きの仕事を依頼されるパターンには、以下の2つがあります。
○顧問契約
○スポット契約
顧問契約は、一般的には毎月一定額の顧問報酬を得ながら、クライアントに手続きの必要性が生じる都度、処理していく形態です。極端にいうと、手続き件数がゼロの月も大量にあった月も、あるいは簡単な手続きしかない月も複雑な手続きがあった月も、毎月の顧問料は変わらないことになります。
一方でスポット契約は、手続きの種類ごとに料金を定め、手続き単位で仕事を受ける形態です。例えば、日常の入退社手続きは自社で行うけど、労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届だけは社労士に委託したいとか、事業所を新設するので新規適用手続きだけを社労士に委託したいといったケースなどが該当します。
手続き顧問業務の報酬相場は?
労働・社会保険手続き業務の顧問料は、一般的には従業員規模に応じて定めることが多いと言えます。報酬金額の相場は、各社労士事務所の方針や受託内容によりケースバイケースですが、最低1~2万円程度から設定し、従業員数が多くなると10万円を超える報酬にもなります。社労士事務所の経営を軌道に乗せるには、顧問先の件数を増やすことが非常に重要です。顧問になれれば、とにかく一定収入が毎月入ることになりますから、これほど安定した仕事はありません。
とはいえ、顧問先を獲得するのは容易なことではありません。クライアント企業側も、初めて社会保険労務士に仕事を委託する場合などは、どれほどの仕事量が生じるのか測りかねるため、最初のうちはスポット契約で様子を見てから、ということもあるでしょう。
そのような場合は、手続きがない月でも積極的に労務関連の情報提供を行うとか、労務相談に親身に対応して、クライアント企業の満足度を高める動きをするよう努めて下さい。
そうすることにより、社会保険労務士の価値を認識してもらえますので、顧問契約に切り替えてもらえるチャンスが高まるでしょう。