キャッシュフロー表でライフプラン全体を見渡す
家計管理をしているのに貯蓄が思うようにできない、贅沢はしていないのに支出が減らない、などなど……。そういう時期は人生というスパンの中では必ず一度や二度は訪れるものです。また、新たに増税時代を迎えて、そういう時期は頻度を増すかもしれません。では、そんなとき、どう対処していけばいいのでしょうか。たとえば、妻が出産を機に退職してしまったケースは、家計がきびしくなりやすい時期のひとつです。それまでは共働きで家計にも余裕があり、さほど節約を意識しなくても貯蓄ができたはず。しかし、妻の収入がなくなったからといって、合わせて生活費も半分近くに落すことは容易ではありません。結果的に貯蓄ができなくなった、あるいは赤字家計になり貯蓄を取り崩すという場合もあるでしょう。しかし、そういう事態に対して、必要以上にネガティブにとらえることはないと、ファイナンシャル・プランナーの八ツ井慶子さんは言います。
「こういった相談はよく受けますが、そのときはキャッシュフロー表を引いてくださいとアドバイスします。長い人生の中で自分たちは今、大変の時期にさしかかっていると、目で見て認識できれば、それが安心感につながるんですね」
キャッシュフロー表とは、いわば人生全体のお金の流れを年表化したもの。家族のライフイベントなどによる収支や貯蓄額の動きを、年齢の変化に合わせて記入していきます。もちろん、そのとおりに人生が進んで行くとは限りませんが、マネープランを考える上で、ひとつの重要な目安となるのです。
「一時的に家計はひっ迫しても、その時期を乗り切ってお子さんが小学校に入学すれば、家計もだいぶ改善されることが、その表を通して理解できるわけです。そしてそのことは、目先の収支ばかりを見ていると気づかないものなのです」
老後もまた、家計がひっ迫しやすい時期です。とくに、現役時代に生活水準が高く、高齢からの収入源は年金だけという場合、リタイア後の貯蓄の減りが早くなりがち。
「そういう事態に陥らないためには、たとえば70歳まで働くといった方法は有効。つまりは、長期的視野で考える。逆算できる、と言ってもいいでしょう。今がこういう時期で数年後にはこうなるから、今はこうしようと考え、行動することができる人が、実は貯められる人なのです」
八ツ井慶子さん
ファイナンシャル・プランナー。大学卒業後大手信用金庫に入庫。本当にお客様にとっていいものを勧められる立場になりたいとの思いから、個人相談が中心のファイナンシャル・プランナーとして独立。近著に『ムダづかい女子が幸せになる38のルール』(かんき出版)と『サラリーマン家庭は"増税破産"する! 』(角川oneテーマ21)がある。テレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。All Aboutマネーのガイドを務める
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取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ パネルデザイン/引間良基