庭師から大統領へ?成り上がりファンタジー
『チャンス』(1979年度作品)庭師のチャンス(ピーター・セラーズ)は知的障害のある庭師の男。彼がひょんなことから経済界の立役者であるベンジャミン(メルヴィン・ダグラス)と知り合う。ベンジャミンはチャンスの庭師としての言葉を大勘違いして買い被り、チャンスは周りの人間に次期大統領候補に祭り上げられていく……というファンタジー。
「庭師のチャンスです」と言ったら「チャンシー・ガーディナー」という名前と勘違いされ、植物の話をしたら、経済界を自然に例えて話しており素晴らしい見識と言われ、野心などみじんもない男が、あれよあれよと次期大統領候補に成り上がる~という、周囲の勘違いぶりに笑いが止まりません。チャンスは何も変わらないし、わかってないのに、周囲は大騒ぎ。自分たちが求めている人物にチャンスを勝手に作り上げてしまっているのですね。チャンスの本当の顔を見ていないのです。またチャンスのふわふわとした天使のような存在感がファンタジー色を強めています。「この人って天然のふりして実は頭いいんじゃないか」とか「賢く見えるけど、実はそうでもない?」ってことあるでしょう。接する人によって正反対に見えてしまうことがある人間のミステリーをコミカルに描いて世間をチクっと刺す。ホノボノしているように見えて、けっこうブラックな成り上がり映画です。
監督: ハル・アシュビー
出演: ピーター・セラーズ、シャーリー・マクレーン、メルヴィン・ダグラス、ジャック・ウォーデンほか
※次はウディ・アレン監督の夫婦で成り上がり映画をどうぞ!