ディカプリオ&スコセッシが組んだ金融界の成り上がりドラマ!
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年度作品)
貯金はゼロで学歴もコネもなく、成功しそうに見えない男ジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)でしたが、彼はやがて天才的な話術の才能と抜きんでたアイデア(というか悪巧み?)で、株式ブローカーとして金儲け。年収49億円の金融界のセレブに駆け上がるのです。このとんでもない男の成功と堕落のストーリーを名匠マーティン・スコセッシが監督するのですから、つまらないわけがない。ジョーダン演じるレオナルド・ディカプリオがどんどん下品になっていく様は、強烈です。
ジョーダンは大金が手に入るや、ところかまわず乱痴気騒ぎをし、お札で鼻をかむような暴挙もいとわず、欲望の限りをつくします。お金の価値観が崩壊してしまうのですね。誰だって「成功したい」「お金持ちになりたい」と思ったりするけど、実際に目もくらむような大金を手にすると、人間ってこんなにもアホになるのかと……。年中無休で、酒、セックス、ドラッグの3点セットを決めまくり、「いつ仕事しているの?」という感じです。もともと家柄がよいリッチな人々はお金の使い方も上品だと言われますが、成り上がりは大金を手にすると、頭が祭り状態になってしまうのでしょう。ジョーダンはザ・成金野郎であり、そのなれの果てはまるで成り上がりの大河ドラマを見るよう。下品極まりないけど、彼の暴走ぶりは楽しい!
ジョーダンは全編で乱暴な言葉を乱発しますが、彼が人の心を掴む術に長け、トークが抜群にうまいのは確かです。ジョーダンはまるで新興宗教のカリスマ教祖のようであり、社員たちは全員、彼のスピーチに聞き惚れ、心酔しています。演説中の社内の異常なテンション、あの狂った空気を作りだすのは凄い。ジョーダンの話術は人の心から野心や狂気を引きずり出すかのようです。
そんなジョーダンのアクの強さはマーティン・スコセッシ監督の個性にピタリとはまり、この饒舌な映画はまさにスコセッシ節がさく裂しています。
スコセッシ監督は来日記者会見で、金儲けのために人をだまし、欲望の限りをつくすジョーダンをありのままに演出したことに対して「あらゆる手段をつくし、嘘をついて人の金を盗んだ男だ。その手口にはみんな興味を持つだろう。でもそんな男の実情を描くのに礼儀正しくする必要はない」とキッパリ。悪は悪として描く、暴力は暴力として描く。スコセッシ監督の映画への信念は、この映画でもくっきりはっきり描かれています。それはもう、ファンとしては「待ってました!」と大喜びするほどに。そしてディカプリオがスコセッシ監督と組むのは5作目ですが、本作はこれまでで一番、それぞれの魅力が相乗効果を発揮し、驚異的なエネルギーを放つことに成功した傑作と言えるでしょう。
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
2014年1月31日より全国公開
監督: マーティン・スコセッシ
出演: レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビー、マシュー・マコノヒー、ジョン・ファヴロー、カイル・チャンドラー、ロブ・ライナー、ジャン・デュジャルダンほか
© 2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
Photo credit: Mary Cybulski
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