テクノポップ/アーティストインタヴュー

MUDDY WORLD、そしてテクノな鉄雄(3ページ目)

MUDDY WORLDのギタリスト、俺はこんなもんじゃない(OWKMJ)のベーシストでもある添田雄介さんが、少年「鉄雄」となり、打ち込みで紡ぎ上げたソロ・デビュー作『Fe』をリリース。空想と現実が入り交じった少年が主役の小説的テクノポップ。今回は、鉄雄として登場頂きました。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

鉄雄とは?

ガイド:
「ボーイ・ゼロ」の歌詞の中に「僕の名前は鉄雄」というのが出てきますね。鉄雄さんの中で、この歌に登場する「鉄雄」は、どのような存在なのでしょうか?

鉄雄:
少年の象徴です。

日本的ポップス

ガイド:
「パイナップルシューズ」は、今回のアルバム曲の中では少し異端ですね。いい感じで“脱力感”が漂いますが、この辺りは、とても日本的ポップスだと感じますが、意識はあったのでしょうか?

鉄雄:
恥ずかしながら意識がありました。アルバム中、最も「今みんなこういう雰囲気好きっぽくない?お前もやってみろよ」と、プロデューサーのようなもうひとりの自分がニヤニヤしながら自分にやらせた曲です。

不信心者のラップ

ガイド:
「カーペットライダー」はラップ。どちらかと言うと、今のヒップホップ的解釈というより、80年代的ニューウェイヴの系譜上にあるラップに聴こえます。どうでしょう?

鉄雄:
かねてから、ラップなのかどうかも怪しい、ただぶつぶつ喋るような歌を作りたいと思っていて、それを実現しました。頭にあったのは90年代のBECKです。一応やってることはラップなんだろうけど、ヒップホップの人からしたらパロディや悪ふざけにしか見えないような、ユーモラスな雰囲気を作りたいと思いました。

ヒップホップは、ヒップホップというフィールドでどうやっていくべきか、この戦場で何を訴えるべきか、というような、ジャンルへの「信仰度」がとても高い分野だと僕には見えます。ですので確かに仰る通り、この曲のラップはそうではない、音楽的アイデアとして面白いから取り入れてみるといったような、ニューウェイヴやロックの雑食精神の影響下にあるものです。「不信心者」のラップ、普段バンドでギターやってる人がやってみたラップ、ストリートにいない人のラップ、です。

フロア寄りはできない

ガイド:
ラスト前の「サンシャイン」は、希望を感じさせる壮大なサウンドになっていますね。同時にあくまでもダンスミュージックというよりも“うたもの”としてのテクノ。“うたもの”にこだわる理由は? でも、もしかすると、突然、フロアよりにシフトみたいこともあるのかもしれませんが…

鉄雄:
tetsuo

鉄雄

この曲はそれこそ最初、広々としたトラックにポツンポツンとクールな歌が乗る、みたいな、まさにフロア寄り、ハウスのようなイメージで作っていました。しかしどうやってもできなくて、しかたなく日本語で声を張って歌い上げたら、あっこれだ、と思ったという経緯がありました。最初に描いていたクールなイメージよりこっちの方がいいと思えた、ということは、鉄雄はやはり「うたもの」をやるためのもの、むき出しで歌うことに比重を寄せるべきもの、クールとかセンスだなんて言ってる場合じゃないものをやるためにやっているものなんだなと、方向を自分で再確認した曲です。

 

「むき出しの歌」「歌というのはむき出しで歌うものだ」という姿勢は、今回アルバムジャケットを撮影してくれた女性アーティスト「とうめいロボ」の影響が多大です。一口に「むき出しの歌」といってもその「むき出され方」は様々だと思うので、要するに自分の姿勢の問題、自分の歌への向き合い方の話です。鉄雄の曲はむき出しの気持ちでもって歌わなくては通用しないんだと、この「サンシャイン」以外の曲でも痛感することが多々ありました。ちょっと甘く見ていると「お前が必要として聴いてきた歌はもっと切実なものだったはずだ」「歌をやるからには歌は最優先事項だ」「歌を自在に操れるなんて思うな」と、歌にすぐ叱られます。

 

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