23区がマンション市場を牽引
先週、不動産経済研究所が発表した「首都圏マンション市場動向―2013年まとめ―」によると、年間供給戸数は前年比23.8%増の56,476戸。市況の好転を受け、マーケットのパイは大きく膨らんだ。ちなみに2000年以降、前の年から20ポイント以上もの急増を果たしたのはリーマンショック後の2010年1度きり。いかに変化の大きな年だったかがうかがえる。特筆すべきは、供給増にもかかわらず「価格も上がった」点。首都圏の平均単価は平米あたり69.7万円(下のグラフ参照)。これは、前年比8.1%の上昇である。
地域別に見ていくと二極化の拡大が鮮明である。地区別供給戸数では23区が46.1%増。都下8.8%減少。神奈川県4.8%増。埼玉県13.5%増。千葉県24.2%増。震災後急減した千葉県の反動を除けば、首都圏の市場拡大に寄与したのは23区であることがわかる。
価格も同様。1.5倍近くも出物が増えたにもかかわらず、23区の売値は8.0%も上昇した。都下イーブン、神奈川県0.3%減、埼玉県1.8%増、千葉県3.3%増である。つまり、戸数が急増した23区の価格だけが上がったというわけだ。アベノミクス効果、東京五輪開催決定効果はすべて首都圏の真ん中に還元された格好となった。
2013年、都心部における値上がりの軌跡
さて、ここで「そうか!23区が人気なのか」と認識を終わらせるのは危険。一都三県でこれだけマーケットが異なる現象こそ、地域細分化の必要性を示唆しているものと学びたい。極すれば、不動産は点(ピンポイント)で見分ける時代である。昨年取材した、とくに価格動向に着目した物件例を挙げてみよう。「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」坪約@800万円、「パークマンション赤坂氷川坂」坪@721万円、「ブランズ目黒花房山」坪@425万円前後(取材時)、「ブランズ碑文谷」坪@350万円前後(同)、「ブランズ本郷真砂」坪@340~350万円(同)、「ザ・パークハウス市谷加賀町」坪@358万円、「ウェリス代官山猿楽町」坪@585万円。いずれも好立地を厳選して取り上げたものばかり。23区のなかでも市場を牽引しているのはどういった物件なのかがおぼろげに見えてくるはずだ。
値付けの強弱を判断するときに留意すべきこと。それは、数字だけを覚えるのではなく、現地における「立地上の長所短所」、「向きの配分」、「地下住戸の有無」などを総合して記憶することだ。そうすれば、実態市場に見合った相場認識が形成できるだろう。
2014年は強含みながら、「供給(予測)も多い」ことに着目
2014年はどんな市場になるか。2013年の好況要因を振り返ってみると、株高、円安、インフレ期待と高額物件に有利な状況が揃った。実需市場の側面では金利と価格の先高観、それに税制優遇が後押しになった。投資向け、富裕層向けの億ション分野はさておき、5,000万円~1億円までの実需に限定していえば、市場を取り巻く環境に大きな変化はなさそうである。引き続き都心部とその周辺は強含みで推移しそうということだ。
ただし、2点ほど注意したいポイントがある。ひとつは消費増税だ。高収入世帯は住宅ローン減税の拡充によりデメリット(負担増)は払しょくされるだろうが、市場全体の景況感に影を落とす可能性がある。その見極めは慎重に。もう1点は供給が2013年と同等にスタンバイしているということ(上のグラフ参照)。上掲のような好立地物件はともかく、一般的な商品は供給がコンスタントにあれば、そう簡単に値上がり(デベによる強気の値付け)はしない。需給のバランスで形成される基本的な相場の概念を見失わないようにしたい。
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