公示価格上昇率、都道府県第1位は「神奈川県」
不動産インフレはどこまで拡大するのか―アベノミクス効果で物価が上昇基調に入りつつある。低金利の後押しもあり、とくに不動産市場は活況を呈している。J-REIT指数はこの1年で34ポイント上昇(2014年1月17日終値1513に対し1年前1129)。都心部のマンション価格が値上がりしていることは再三取り上げてきたが、この勢いはどこまで広がるのか。日本の地価は地価公示(国土交通省)、路線価(国税庁)、基準地価(都道府県)、固定資産評価額(市町村)など指標が多く存在するため、一物四価といわれている。だが、そのなかでも地価公示(以下「公示価格」)は適正な価格形成に寄与することを目的にした*正常な価格とみなされ、路線価や固定資産税評価額の目安にもなっている。
*正常な価格とは「土地について、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格」。売り手と買い手の双方に売り急ぎ、買い進みなどの特殊な事情がない取引において成立する価格であり、売り手にも買い手にも偏らない客観的な交換価値をあらわしたものである。(国土交通省発表資料より引用)
つまり、再開発や大型商業施設の開業などで人気の高まりや利便の向上が見られた場合、その効果が即時に反映される。取引事例の積み上げに基づいて数値が後追いするわけではないため、リアルタイムに近しい市場性を把握することができる。
商業地は川崎市幸区、住宅地は川崎市中原区がトップ
H25年における都道府県別の「公示価格<商業地>変動率」上位は上の画像の通り。下落しなかったのは「神奈川県」と「宮城県」のみ。2位「宮城県」は前年落ち込んだ後の回復とも読める。対して1位「神奈川県」は前年も全国平均を上回っている。もう少し詳細にみてみよう。下表は一都三県に絞り「市区別」で変動率を並べた。商業地と住宅地をそれぞれ比較したが、神奈川県が上位を占めていることが一目瞭然だ。商業地1位「川崎区幸区」は「ラゾーナ川崎」の位置する川崎駅西側一帯。住宅地1位「川崎市中原区」は「武蔵小杉」駅を中心とする多摩川以西のゾーン。近年話題の大型再開発が市場相場(地価)を牽引していることがわかる。
ちなみに23区は商業地19位で「墨田区」が唯一ランクイン。この辺りは新築マンションの動向とはやや異なる感覚か。前述した「武蔵小杉駅(中原区)」は駅前タワーマンションのイメージと重なるのだが…。都心好立地におけるピンポイントの特例と中広域の定点観測とは分けて整理するほうがよさそうだ。
長期的に向上し続ける「川崎」駅の利便性
川崎市幸区では、3年ぶりで(駅徒歩10分圏内に)新築マンションが分譲される。「ザ・パークハウス川崎」(三菱地所レジデンス、販売戸数59戸)。「ラゾーナ川崎」のある西口徒歩7分。専有面積は55.78~73.08平米。南向き中心、ファミリータイプで構成された分譲マンションだ。昨秋からホームページを設け1月中旬までで約900件の反響。1月初旬からの予約制事前内覧会はほぼ満席の状態が続いているという。だが、顧客層は(広域宣伝を本格的に行っていないこともあって)地元中心の傾向にあるのだそう。これを聞いて上掲の動向や将来性がまだ商況に表れていないと思った。
というのも、リニア中央新幹線の始発が計画通り「品川駅」を起点とすることになれば、現在の丸の内1点集中が品川へ分散する可能性があるとも言われている。「川崎」はJR東海道線なら「品川」から1駅9分。利便性の向上は必至だ。羽田空港の国際化も重なり、ますます期待の高まるロケーションになるだろう。
「ザ・パークハウス川崎」の分譲単価は@250万円台予定。武蔵小杉(坪280~300万円レンジ)に比すれば、まだまだ手の届きやすい価格。東口を中心とする繁華街のイメージが強かったようだが、これからは利便性に見合った相場形成がなされる可能性もある。資産性を重視したい人にとっては、検討に値する地域の一つといえそうだ。
【関連記事】
本当に暮らしやすいマンション選び
注目のマンションリスト<2014年版>