指導者への第一歩となるか
巨人の監督就任については、あくまで控えめな発言の松井氏。しかし、その言葉の端々からは監督への強い意欲を見ることができそうだ。
原監督は、松井氏に打撃指導はもちろん、2009年に米大リーグのヤンキースで日本人選手初となるワールドシリーズMVPに輝いたことから、「世界で通用するメンタルを伝授して欲しい」と切望した。これに対し、松井氏は「特別なものは持ち合わせていないと思うが、求められれば考えたい。何かプラスの力になれれば」と前向きに答えた。
楽天に3勝4敗で敗れた昨年の日本シリーズ。悲願の連続日本一に届かなかった“1勝”のために、西武から片岡、広島から大竹、そして中日から井端を補強して戦力は整った。あとは強靭な精神力、メンタル面の強さが必要。その点を松井氏に託す。
今回は臨時コーチだが、もちろん、これで終わりではない。まさに指導者への第一歩だ。1月10日、松井氏は恩師である長嶋茂雄終身名誉監督とともに、東京・大手町に完成した読売新聞東京本社の新社屋を訪問した際、渡辺球団会長と白石オーナーと会談した。席上、臨時コーチ就任を要請されるとともに、「巨人は両手を広げて待っているよ」と将来の監督就任までほのめかされた。
これに対して長嶋氏も17日、「オーナーもおっしゃったように、いつか指導者になって欲しい。巨人で10年、メジャーで10年やってきて、今年のキャンプでも(臨時コーチとして)入ってくるし、私もOBの1人として(監督に)なって欲しいと思っている。ファンもそれをわかっている」と同調した。
球団、そして恩師の熱意を受けた上で、松井氏は現状の考えを口にした。「巨人の一OBとして言っていただいているのは大変光栄なこと。ただ個人としては近未来的(な話)とは受け取らなかった。長い目で、ということだと思うし、現時点でユニホームを着られるほどのものを持ち合わせていない。勉強しなきゃいけないことがたくさんある。ただ大きな気持ちでいてもらっていることは感謝しないといけない」とあくまでも控え目だ。
臨時コーチから“臨時”が外れ、コーチから監督へという流れがスタートするのが、今キャンプからであり、松井氏から目が離せない日々が続く。「大きな意味で長嶋終身名誉監督の背中を追いかけていきたい」という言葉が、監督への強い意欲ととらえて構わないだろう。