復刻発売される"シンガーソングライター"やしきたかじんの世界

2014年1月3日、惜しまれつつも亡くなったやしきたかじん。
歌手としての力量は高く評価され、『東京』、『やっぱ好きやねん』、『なめとんか』などのヒット曲も持っているが、晩年はテレビでの豪快な司会っぷりや政界、世論への影響力が大きくクローズアップされるあまり、本格的な音楽的評価はなされていなかったように感じる。

そんな彼が、デビューした1976年から1981年にかけてリリースした初期アルバム4作品が2月26日に復刻発売される。
いまだヒット曲はなく、不遇と言ってもいい時期の作品だ。

先に挙げたヒット曲はみな作家から提供されたものだが、このアルバムの収録曲はほとんどすべてが本人作曲。
独特の繊細でドロドロとした世界感、サウンド面での斬新なチャレンジなど、歌手というよりもむしろ"シンガーソングライター"と呼んだほうがしっくりくる。

今回は発売にさきがけ、アルバムそれぞれの魅力や音楽的特徴、聴きどころを解説していきたい。

『TAKAJIN』(1976年リリース)

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『TAKAJIN』

全曲、本人作曲。歌詞もすべて学生時代からの友人、荒木十章がてがけており、男女のふれあいや酒場の風景を抒情的につづったもの。

たかじんは自ら作詞はしないものの、歌詞にはかなりのこだわりがあったそうで、著名な作家であっても何日も論議したり罵倒することがあった。
そんな彼にとって、彼を深く理解する荒木はこの上ない相方だっただろう。

編曲は実力派GS『ザ・ハプニングス・フォー』出身で、当時作曲家、編曲家として活躍していたクニ河内。

"三角形の歌"と後年、笑いのネタにしていた『夜のピアノ』やメジャーデビューシングルで初期を代表する名曲『ゆめいらんかね』などが収録されている。
曲調は『夜のピアノ』のように十代のアマチュア時代に作った創作的な曲、フォーク風歌謡曲、ブルースなど色とりどりな構成で、シンガーソングライター、やしきたかじんの等身大の姿が表現されているように思われる。

『愛しのガール』(1977年リリース)

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『愛しのガール』

作詞、作曲、編曲の作家陣は前作と同じ。

憂いをおびたたかじん節は全体を通して深みを増していて、『昨日のあなた』に代表されるブルースナンバーなどは非常にクオリティが高い。
また、斬新な音楽的挑戦のあとも見られ、表題曲『愛しのガール』はスラップベースの効いたアップテンポなブルースロックナンバー、『雨に消えて』はボサノバと、印象として際立っている。前作が好きな方にはよりおススメのアルバムだ。

『明日になれば』(1980年リリース)

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明日になれば

『旅に唄あれば』の鈴木キサブロー以外は本人作曲。
作詞はこれまでの荒木十章に加え、来生えつこ、山川啓介など有名作家が参加している。編曲は歌謡曲全般を幅広く手がけている若草恵。

これまでのアルバムと方向性が大きく変わることはないが、全般的に癖が薄くなってポップに、歌詞の世界観も普遍的な内容のものが増えているように思われる。
前2作のドロドロとしたマニアックさが好きな人には若干物足りないかもしれないが、そのぶんよりメジャーなポップスとしてアプローチすることに成功している。
表題曲でシングルの『明日になれば』、岡本おさみ作詞の『旅に唄あれば』は今も人気の高いナンバーだ。

『プロフィール』(1981年リリース)

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『プロフィール』

全曲、本人作曲。
作詞は前作と同じ顔ぶれが多い。
編曲は萩田光雄。

前作よりもさらにポップな歌謡曲タッチになり、布施明のような王道歌い上げ歌謡曲『横顔』、アーバン歌謡曲とでも呼べそうな『ルームナンバー301』、オールディーズ・ポップス臭い『お前だけひとり』など時代なりの平凡なサウンドの曲が続く。
たかじんの甘い歌声は堪能できるが、少しきれいにまとめすぎた感も否めない。
たかじんと言えば、男性としてはじめて宝塚歌劇の舞台に立ったエピソードが有名だが、その時に歌った『ラスト・ショー』も収録されている。


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