※2014年のおすすめクラシックCDは、CD屋さんが選ぶ「クラシックCDアワード 2014」!記事をご覧ください。

2013年、最も売れたクラシックのCDランキング

2013年もたくさんのクラシック音楽のCDが発売されました。その中で最も売れたのは何なのでしょう?

北村さん

最新の演奏から古い録音まで詳しいタワーレコードの北村さん

ということで、全国にお店を展開し、クラシック部門にも力を入れるタワーレコードさんのクラシック輸入盤売り上げランキングについて、タワーレコード株式会社 商品本部 Classicバイヤーの北村晋さんに聞いてきました。

タワーレコードは今や単にリリースされたCDを売るにとどまらず、優れた演奏なのに廃盤となってしまったものをタワー・オリジナル企画として発売するレーベル企画も進めています。

その担当でもある北村さん、早速ベスト5から教えてください!

2013年、タワーレコードで最も売れた輸入盤ベスト5!

■5位:フルトヴェングラー(指揮) ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
フルトヴェングラー

 

ガイド大塚(以下、大):いきなり古い演奏ですね(笑)。フルトヴェングラーは20世紀前半に活躍した最大の巨匠で、同じくバイロイト祝祭管弦楽団を振った1951年の第九が名盤として非常に有名ですが、これは亡くなる約4カ月前の1954年の演奏ですね。

北村さん(以下、北):はい、演奏自体は以前より他のCDで出ていたのですが、今回ORF(オーストリア放送協会)が持っていた音質の良いテープから新規でCDに起こしたということで音質の良さが売りになっています。

:と言っても、音は悪いですね(苦笑)。

:そうなんですよ(笑)、元々音はモノラルですし、そこから格段に良くなるということはないんです。フルトヴェングラーが好きな方向けですね。ですが5位に入るということは、いかにフルトヴェングラーのファンが多いのか、ということだと思います。

:フルトヴェングラーにしか出せないヒューマンな音ってありますもんね。この演奏も音が悪い中にも情熱や優美さがとても感じられましたが、最後のアッチェレランド(テンポを速くする)が1951年に負けず劣らず有り得ないほどの超高速だったりビックリする点も多かったです(笑)。

:確かに(笑)。最晩年68歳の演奏ということを前提に聴くと、かなり元気だなと感じていただけるはずです。そこが面白いですね。


■4位:バティアシュヴィリ(ヴァイオリン) ブラームス:ヴァイオリン協奏曲、他
バティアシュヴィリ

 

:一変して華やかな盤で良かったです(笑)。バティアシュヴィリは才色兼備の今をときめく女流ヴァイオリニストですが、やはり人気ですね。

:前回出たショスタコーヴィチの協奏曲も曲がメジャーではないのにとても売れましたが、今回は人気のブラームスということで、これは「待っていた」という方が多かったと思います。指揮がドイツ系に定評あるベテランのティーレマン、オーケストラがドイツの伝統あるシュターツカペレ・ドレスデンということでバックも強力ですし。ティーレマン、結構大活躍ですよね。

:ティーレマンは重厚なドイツの伝統を引き継ぐ指揮者な一方で、独特のタメがあったりもしますが、ここではバティアシュヴィリをあまり邪魔していないですよね(笑)。オーケストラだけの部分でものすごく速くなったりして、それもまた飽きさせない(笑)。

:そうですね(笑)。結構テンポは動かしていますが、仰るとおり、一緒に演奏する部分で動かしすぎなかったのが良かったと思います。彼女の良さをかなり出せていると思いますね。

:ブラームスのヴァイオリン協奏曲は2年前にこちらも人気のヴァイオリニスト、イザベル・ファウストが出していますが、全然違う演奏ですね。

:本当に全然違う演奏ですね。元々渋めの曲ではあるのですが、この曲はジネット・ヌヴー以来の伝統と言いますか、女性が弾くととても映え、女性が録音するとかなり売れます。

:女性が弾くと色気が出ますよね。特にバティアシュヴィリの重音(2つ以上の音を同時に弾く)は粘り気があって、色気があるなぁ、魅力だなぁ、と思いました。

:そうですね「弾き込んでいるなぁ」という感じがしますよね。


■3位:セル(指揮) ドヴォルザーク:交響曲第8番、ブラームス:交響曲第1番
セル

 

:これはビックリです! セルはカッチリとした演奏で知られる名指揮者ですが、1970年に亡くなった一昔前のアーティストです。今も人気なんですか? 彼は村上春樹さんの小説『1Q84』でヤナーチェクの「シンフォニエッタ」の指揮者として書かれ売れましたが、その影響ってまだあるのでしょうか?

:『1Q84』の影響は今やほとんどないと思います(笑)。これはルツェルン音楽祭に登場した際の演奏で、なぜ売れたかというと、チェコ・フィルを振ったドヴォルザークの8番が未発表のライヴで、かつステレオ録音であることがポイントですね。彼はこの曲のスタジオ録音を最晩年の1970年に行い名演として知られていますので、その前年の演奏として「こっちの演奏もぜひ聴きたい」と買ってくださった方が多いのではないでしょうか。ここまでよく売れたと思いますが、セル人気というのも未だに根強いです。何でも売れるわけではないですが、タワーレコードが企画しソニーさんから出したセルのワーグナー作品集もかなり売れました。

:ミリタリーと言われたほどオーケストラを鍛えて凝縮された演奏を生み出した指揮者で、どれも完成度は高いですもんね。ここでもスムーズな運びの上で次から次に出るメロディーを歌わせる見事な演奏となっています。

:そうですね。日本人はこういう指揮者が好きなんだな、と思いますね。


■2位:ラトル(指揮) ストラヴィンスキー:春の祭典、他
ラトル

 

:これは本当にすごい演奏でした! 変拍子や不協和音の嵐で革命を起こしたハルサイ(春の祭典)の初演から100年という記念の年に良いCDが出ましたね。

:えぇ、ここまでのレベルの演奏はベルリン・フィル以外ではできないですし、それをさらにラトルが煽っているので「これ以上のものはなかなか出ないのでは?」と思うほどでしたね。期待通り、もしくは期待以上の怪物的な演奏でしたね。初演から100年の時点での一つの決定盤と言っていいのかもしれません。

:ですよね。各奏者は巧いし、迫力もある。まだこんな演奏の仕方があったのかと驚きました。ただ、上手すぎちゃって、最初のファゴットの超高音は作曲家のストラヴィンスキーは苦しい音を出そうとして書いたと言われますが、そこですら美音で演奏されているという(笑)。

:普通にできちゃうんですよね。100年経つとこういう曲になってしまったという(笑)。

:この曲を味わうポイントが完全に変わりましたね。ラトルはベルリン・フィルの芸術監督を退任することが決まり、集大成的な感じですね。関係性は極めて良さそうですね。客演でこういう密度の濃い演奏は生まれないですよね。

:ないでしょうね。両者の関係がピークを迎えているということが分かる完成度の高い盤でした。


■そして1位!:ギーレン(指揮) マーラー:交響曲第7番
ギーレン

 

:これは衝撃の1位(笑)。というのも、ギーレンは現代音楽のスペシャリストで、マーラー演奏には定評がありますが、これは、タワーレコードさんが企画した盤で、世界に先駆けて発売されたものなんですよね。おめでとうございます!

:ありがとうございます(笑)。我々もこれほど売れるとは思っていませんでした。実は、ギーレンは日本の売り上げがダントツなんですよ。

:え、そうなんですか!?

:はい、これも、発売元のテスタメントさんが、タワー側が興味なければCDにしない、という話だったんですよ。ギーレンは日本で一定の需要があるのですが、まさかマーラーの7番という人気とは言えない曲でこんなに売れるとは思いませんでした。彼がベルリン・フィルを振った珍しい演奏なので“話題盤”というくらいの盛り上がりかと思ったのですが、聴くと面白い演奏なんですよね。カラヤンが首席指揮者を務めていた時代のメンバーがまだ残っている時にライヴ演奏されたもので、ギーレン自身は満足したようで「私のやりたいようにオケがやってくれた」と言っていますが、聴くとそうでもなくて(笑)、結構至る所でオケが反抗しているんですよね。

:マンドリンが活躍する4楽章の「夜曲」なども美しく良かったですが、思わぬ激しい音が飛び出すようなところもありますよね(笑)。

:ぶつかっているんですよね。ギーレンという精緻で端正な音楽を作る方がベルリンのライヴだとこんな演奏をするんだという意外性がありました。

:ギーレン人気ってやっぱりありますよね? ギーレン、ノリントン、クーベリックなんかは、カラヤン、バーンスタイン、アバド、ラトルみたいな、どメジャーな指揮者じゃないと思うんですよ。メインストリートじゃないところにいるけど、その個性的な音楽が愛される人というか。

;確かに、地味な印象からどんどん変わって昔より相当売れるようになってきた方々ですね。あと話変わって、去年の1位は、バーンスタイン指揮のマーラーの交響曲第9番だったんですよ。ですので、マーラー人気も落ちない、と言えそうです。


という結果でした! 次は6位~10位に一言ずつコメントをもらいましょう。