総「スマート」の時代だから見極めたい質と内容の違い
スマートハウスには特に定義がありません。一般的に太陽光発電システムとHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)がついていればそれにあたるとみられているようですが、要するに定義としてはその程度。ですから、一部には省エネ性能を若干向上させたような住宅でもスマートハウスと呼称しているという事例もないわけではありません。ですから、スマートタウン(スマートシティ、スマートコミュニティなどとも呼称されます)についても特に定義があるわけではなく、様々な街づくりの案件に「スマート」という言葉が使われているのが現状。質や内容にも様々な分譲住宅地があるということです。
具体的には、例えばこういうこと。仮に太陽光発電システムやHEMSを装備していても、省エネ性能が低い住宅、使い勝手の悪い住宅、つまり住み心地の良くない住宅であれば本当にスマートハウスなのかということです。おそらく、こんな事例、これから結構増えてくると思われます。
住宅の世界では質や内容を問わず、安易に「スマート」という言葉が使われるようになってきたわけです。そのため、私たちは「スマート」という言葉の中身について、しっかりと見分けられるようにならなければ、本当に満足度が高い住宅取得はできないということになり、その見極める力が求められるのです。
さて、先日私は、これは最先端のスマートタウンの事例になるだろうという分譲住宅地を取材してきました。大和ハウス工業が茨城県つくば市において開発中の「SMA×ECO CITY(スマエコ・シティ)つくば研究学園」です。この分譲住宅地を例に、良質なスマートタウンについて考えていきます。
つくば市に全ての住戸がZEHのスマートタウン
概要は以下の通りです。所在地:茨城県つくば市研究学園C43街区1
交通:つくばエクスプレス「研究学園駅」徒歩11分
総販売戸数:175戸
延べ床面積:117.10~126.4平方メートル(1住戸あたり)
「スマエコ・シティつくば研究学園」はつくば市の「実験低炭素タウン構想」における先進的モデル街区として整備されているもの。12月14日につくば市長らの臨席による街開き式典が行われ、その時点で12戸が完成していました。
各住戸には太陽光発電システム(約3.5kw)、家庭用リチウムイオン蓄電池(6.2kwh)、家庭用燃料電池「エネファーム」、HEMS(オリジナルの「D-HEMS2(本来はローマ数字)」)、電気自動車充電用コンセント、LED照明など設備が搭載されるスマートハウス仕様となっています。
国は2020年をメドに全ての新築住宅を「ZEH」化する計画です。ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略。年間の一次エネルギー消費量がゼロまたは概ねゼロになる住宅のことをいいます。「スマエコ・シティつくば研究学園」の住宅は、全てこのZEHに対応するものであり、これからの住宅のあり方を先取りしたものです。
また、HEMSや集会所にあるクラウド用モニターにより、街全体のエネルギー(電気・ガス・水道)の利用状況を「見える化」するシステムも導入。さらに、住戸の一部ではHEMSと連動しエネルギーの使いすぎなどを色や音声で知らせてくれるコミュニケーションロボットの実証試験なども行うといいます。
さて、ここまではあくまで設備の話。今回の分譲住宅地のように各種設備を取り入れるのでさえ大変なことですが、ここまではある程度わかりやすいポイントといえます。では、もっと踏み込んでスマートタウンの善し悪しを見分けるためには、どのようなポイントに留意すれば良いのでしょうか。
次のページでは街づくり全体の話も含め、さらに踏み込んだ内容をみていきます。