愚痴オンリーでは、後でへこむ結果に
前ページでご紹介した2つのタイプの特徴は、吐き出す方向がいずれも前向きだということ。そうです。大事なのは、吐き出す方向性です。次の例を見てください。
A子さん:「うちの旦那、ちっとも育児を手伝ってくれないの。私の大変さが全く分かっていないから、出かけるときも、ギリギリまで寝ているの。で、起きても、自分のことだけやって終わり。終いには、まだ準備が終わっていない私に、『グズグズするな!』って。もうひどいでしょ!許せない!」
このような「吐き出し」は有効に見えるでしょうか? A子さんは、友人宅で散々グチを言い、この後、家に帰って、気持ちがスッキリしているでしょうか? 残念ながら、ストレス解消という点から見れば、解消どころか、悪化の方向性さえあります。
愚痴、文句、不平、不満、どれも心理学的には、心の状態を下げてしまうマイナスなもの。特に、この例のように、「相手のことを許せない!」というパターンは、ストレスを逆に悪化させてしまう可能性が高いのです。
「○○さんのことを許せない」
「この間のあの一件は絶対に許せない」
のように、ある人やある一件を「許せない」と思うと、人はそれに逆に縛られるようになります。本当なら、一刻も早く忘れ去りたいことなのに、「許せない」と思えば思うほど、心からそれが離れなくなってしまうのです。
愚痴で終らせないために
ではどうすればいいのでしょうか?ここで見逃してはいけないのが、「心の中のつぶやき」です。ママ友に愚痴を言うときというのは、心の中も100%その愚痴で満たされています。つまり、心の中が、「許せないこと」で溢れかえっているのです。「夫に対する許せないこと」「子どもに対する許せないこと」「ある店員さんに対する許せないこと」など、それらをひと言発するたびに、真っ黒なインクがポタッ、ポタッと心の中に広がっていくイメージを想像してみてください。それだけで「事は良い方に進まないだろうな」ということが容易に想像できますよね。
人は、心の中が一旦曇ってしまうと、周りを上手く見通せなくなる傾向があります。真っ黒に染まってしまった心では、見るもの全てが、暗く、ネガティブなものに感じられてくるのです。
愚痴は、前向きで建設的な方向性がなければ、吐き出しても効果がありません。つまり、「許せない」という気持ちがママ友に聞いてもらったことでスッキリし、「許せる気持ちになった」という展開でない限り、許せない気持ちは心にまとわりついたまま。思い出した瞬間に、イヤな気持ちがまた簡単に心に押し寄せてしまうのです。
上手に吐き出すポイントは、心のつぶやきの質を上げること。前ページでご紹介した、「問題解決型」か「共感解消型」に持っていくのがコツです。
「愚痴っていても何もはじまらない」
「じゃあ、何ができるかな?」
「いいアドバイスをくれる人がいないかな?」
「だれか、同じようなことを乗り越えた人はいないかな?」
こうやって、少しでも前に進むことを考えれば、愚痴も良いバネになってくれます。前に進むために「愚痴る」、これがストレス解消につながる賢い愚痴の活用法です。