花粉症の免疫療法とは

花粉症のイメージ

くしゃみや鼻水などの症状が続く花粉症。そもそも症状自体を抑える治療法はないのでしょうか?

免疫療法とは、花粉症に対して免疫をつけるための治療です。体がアレルギーを起こす物質であるアレルゲンに反応することを「感作(かんさ)」と言います。反応を減らすと言う意味で、「減感作療法」(げんかんさりょうほう)とも呼ばれています。

つまり、免疫療法(減感作療法)は、微量のアレルゲンを反復注射または舌下に投与したり、アレルギーの力を減らしたアレルゲンを服用したりして、アレルゲンに対して反応しない状態にすることを言います。

免疫療法をすることで、体の中では、アレルゲンに対するIgEの値が減少したり、ヒスタミンなどのアレルギーの症状を起こす化学物質が出てこなくなったり、アレルギー反応を抑える制御Tリンパ球が出てきたり、アレルゲンに対するIgEを抑える物質(IgG)が体の中で作られIgEの働きをブロックしたりすることで、アレルギー反応が起こらなくなると言われています。

免疫療法は、花粉の場合はスギ花粉症に対して行われ、アレルギー性鼻炎の場合はダニに対して行われます。今回はスギ花粉について解説します。舌下免疫療法を施行する医師の条件としては、アレルギー科領域の専門的知識と経験を十分に持った医師であることが必要になっています。
 

免疫療法に期待できることと副作用

免疫療法は、花粉症が治る可能性を秘めた治療方法です。症状の改善効果が期待でき、長期間にわたって薬の使用量が減少することが期待されています。薬で十分な効果のない人にも効果が期待されます。

今まで行われてきた皮下注射による免疫療法では、70%の有効性があります。3年以上治療を続けると、治療中止後5年後にも80~90%の効果が持続しています。

一方で、副作用がないわけではありません。特に皮下注射の場合は、注射部位の腫れ、時にじんましんやショック、喘鳴などのアナフィラキシーになることもありますので、注意が必要な治療方法です。そのために免疫療法を最初から選ぶのではなく、いくつかのことを先に試みてみることが大切です。
 

免疫療法を受ける前にすべきこと

飛散

まずはスギ花粉の飛散に備えることが大切です

まずは、十分なスギ花粉の暴露を避けることが必要です。つまり、免疫療法はひとつの方法であって、万能ではありません。免疫療法中も療法後も、スギ花粉の飛散には注意する必要があります。

スギ花粉回避のためには
  • 花粉飛散情報に注意する
  • 飛散量が多い時は外出を控え、外出時には、マスク、メガネを使用する
  • 毛織物などの衣服の使用は避ける
  • 帰宅時には衣服や髪をよく払って入室し、洗顔、うがい、鼻をかむ、鼻うがいをする
  • 飛散の多い時には、窓や戸を閉めておき、換気するときには小さく開け、短時間にして、カーテンをしておく
  • 飛散の多い日の布団や洗濯物の外干しは避け、部屋干しにする
  • 掃除をしっかりとする。特に窓際の掃除は念入りに
これらを実践することが大切です。
 

免疫療法を受けられる人・条件

免疫療法の適応の方は、皮下注射は5歳以上、舌下療法は5歳以上(錠剤タイプと液状のエキスがあり、液状エキスの場合は12歳以上ですが、発売中止が予定されています)です。スギ花粉症を診断がしっかりされている人で、
  • 抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイドの点鼻薬などで十分にコントロールできない人
  • 長期の薬の治療が望ましくない人
  • 薬の副作用が出る人
が、適応となります。
 

免疫療法を受けられない人

免疫療法ができない人もいます。
  • 心臓の薬であるβ阻害薬使用中の人
  • 不安定な気管支喘息の人
  • 全身ステロイドを毎日使用している人
  • 抗がん剤を使用している人
  • 妊婦
  • 急性感染症にかかっている人
  • 自己免疫疾患、膠原病のある人、または以前、かかったことのある人
なお、転居の予定や継続的な通院ができない人はできれば、避けたほうがいいでしょう。
 

免疫療法の方法

現在、方法として、
  • 注射による皮下免疫療法
  • 舌下免疫療法
の2つの方法があります。

次に注射による皮下免疫療法と、舌下免疫療法についてそれぞれ解説します。
 

スギ花粉に対する注射での皮下免疫療法

皮下療法

皮下にスギ花粉のエキスを注射します

スギ花粉飛散時期以外で治療を開始します。成人で行われる治療方法です。

初回はスギ花粉の皮膚試験を行い、反応する濃度か1/10の量から開始します。注射後は20から30分は副作用が出ないどうかをチェックします。徐々に濃度を増やして行きます。増やし方は50%増量法、100%増量法などがあり、維持量(1回0.5ml)になれば、1ヶ月に1回注射して、2~3年は治療を継続します。

注射なので、月に1回は医療機関に受診します。

副作用は、注射部位の腫れとアナフィラキシーです。特にアナフィラキシーに対しては速やかに適切な処置を必要とします。注射は医療機関で行い、注射後30分は医療機関に居てください。
 

スギ花粉に対する舌下免疫療法

舌下療法

舌の下の部分にスギ花粉のエキスを投与します

スギ花粉が飛散する1~5月などの時期以外で治療を開始します。できれば、12月までに開始した方がよいとされています。

少なくとも2~3年以上の毎日投与が可能であることと、初期は1~2週間に1回、慣れてきたら1~3ヶ月に1回は通院可能であることが必要です。

製剤は、舌下液(シダトレン)と舌下錠(シダキュア)があります。

舌下液(シダトレン)は2分間舌の下にスギ花粉のエキスであるを保持でき、初回は30分間、安静にして、医療機関で観察されます。舌下液には薄い液(200 JAU/mLボトル)と濃い液(2000 JAU/mLボトル)があります。1週目は、薄い液で増量し、2週目は濃い液で増量し、2000 JAUになれば、舌下液(2000 JAU/mLパック)で3週目以降で維持量として継続していきます。12才以上で徐々に増量していきますので、最初は1~2週間に1回受診し、維持期になれば、1~3ヶ月に1回の通院になります。舌下液は2021年3月31日で販売中止になります。

2018年6月から舌下錠が発売されました。舌下錠は1分間舌の下にスギ花粉のエキスであるを保持でき、初回は30分間、安静にして、医療機関で観察されます。舌下錠には2000 JAUと5000 JAUの2種類です。1週目は、舌下錠(2000 JAU)、2週目は舌下錠(5000 JAU)となり、維持量として継続していきます。2018年6月から2019年6月までは2週間に1回受診することになります。5才以上から治療が可能になりました。

投与直後には、最低2時間以内の激しい運動、アルコール摂取、入浴は避けます。歯科の治療中や口内炎、口に傷のある場合は一時中止します。

この治療は、毎日する必要があるため、家で行うことになります。口の違和感、かゆみ、腫れがある場合は、治療中の医療機関に連絡してください。これらの口の違和感などは治療中に軽くなったり、起こさなくなります。アナフィラキシーは非常に稀ではありますが、皆無ではないので、注意は必要です。

無症状で続けていくことが治療の基本ですから、決して自己判断で、中止したり、再開しないようにしてください。

現在、この治療方法は、講習会受講またはe-learnigを受けてテストを受けて合格した医師に限定されています。また、皮下免疫療法と舌下免疫療法での効果の違いは、そう大きくありませんが、皮下の方が効果が少しあるようです。ただ、副作用や利便性から舌下がメインになっています。

現時点では、舌下免疫療法は家で毎日行い、医療機関に定期的に受診できることが必要条件になってきます。
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