老朽化した日本家屋

まだまだ住めるはずの日本家屋。家主を失ったことでせっかくの建物が価値を失いかけていました。

若い頃からずっと忙しい生活をしていた方にとって定年退職を迎えるということは、学生が学校を卒業するのとは違った感覚があり、自分の時間をどのように使っても良いという、今まで体験したことのない現実に戸惑ってしまうことも多いようです。

さて先日、私はとても素敵な暮らしを始められた方を取材する機会がありました。住まい手を失っていた日本家屋に出会い、リフォームして新たな生活をスタートさせる決断をし、スローライフを実現された方です。

今回は、築40年超の日本家屋を購入し、リフォームによって素晴らしい新生活を実現された方の事例をご紹介いたします。

そろそろゆったりとした暮らしをしたい

今回取材にご協力いただいたのは千葉県市原市で新生活を開始されたSさん(60代)。仕事では、福島、東京、千葉を行き来し、特にここ十数年は責任ある立場での業務を求められる一方で、高齢になる母親の介護の心配も生じていました。まだまだ働くことも可能だったのですが、介護のことや自らの健康状態のことなどを考えると、仕事をリタイヤする時期が近付いていることを意識せざるを得ませんでした。

そのような中、Sさんに転機が訪れます。知人を通じて、とある築41年の日本家屋に出会うことになったのです。その建物は今までお年寄りが1人で住んでいたのですが1年ほど前に亡くなり、この土地と建物が売却されることになったという話を聞きました。

家主を失っていた日本家屋との出会い

廊下

建物の傷みは気になりましたが、南に面した長い廊下に、日本家屋の温もりが感じられました。

なんとなくその話に興味を持ったSさんは、早速その建物を見せてもらうことになりました。家主を失っていた建物は老朽化による傷みがあちらこちらに見受けられ、ところどころ補修はされているものの、かなり汚れも目立つ状態でした。

しかもこの物件は市街化調整区域にあり、再建築が難しいことから、売主は土地と建物の処分に困っていました。

 しかし、南側に面した長い縁側を兼ねた廊下や、日本家屋特有の平屋の間取り、そして家庭菜園をするには十分すぎるほどの広い庭があり、Sさんは未来の自分の暮らしをイメージするのにさほど時間はかかりませんでした。

「この場所に新しい家を建てるのではなく、リフォームすれば十分に住めるはずだ」と考えたSさんは、その後、約700万円(登記費用含む)で土地と建物を購入するに至ったのです。

次のページでは、リフォーム工事前の間取りと様子をご紹介します