好きな会社に投資してみようとよくいうが
投資について初心者向けの本を読んでいるとほぼ確実にでてくるのが「好きな会社、応援したい会社の株を買ってみよう」というメッセージです。投資というのは株式や債券を発行する主体の活動を資金提供という形で支援することです。債券であれば元本と利回りが、株式であれば配当や含み益が得られます。企業や社会の発展にも貢献しつつ、自分のお金も増えるのが投資という仕組みのおもしろいところです。
せっかく投資をするのだから、自分が応援したい会社を買ってみよう、と考えるのも自然な発想で、こうした本の話もうなづけます。投資の王道は応援したい会社の株を買うことだ、と言うと、ほとんどの人は賛成します。
しかし、「発想の逆転」を考えるマネーハックの連載コラムとしては「意義あり!」と口をはさんでみたいと思います。
というのも、安易に好きな会社に投資をすると、3つの良くない点が指摘できると思うからです。
反対理由1:「知らないいい会社もたくさんある」
最初の反対理由は「知っている会社の数」と「知らない会社の数」は圧倒的に後者のほうが多いということです。東京証券取引所には、3400社ほどの企業が上場しています。私たちがぱっと思い浮かぶのはおそらく100社ぐらいではないでしょうか。スーパーやコンビニで見かけることができるのは、世の中にある会社のほんの一部にすぎません。となると、「知っている、いいと思う会社」より「知らないけれど、実はいい会社」のほうがたくさんあるはずです。
ちょっと調べれば、世の中にはもっといい会社があることに気づくことができます。それに、自分だけがいいところを知っている、と思うのも勘違いで、ほとんどのことは「他のみんなも知っている」ことだったりします。
最初から投資範囲を限定してはいないでしょうか。これが反対する第一の理由です。
反対理由2:「好きになると冷静に評価できない」
彼女(ないし彼氏)とつきあい始めると、相手に対して評価が甘くなります。つきあう前と、つきあった後では、同じ相手について同じ評価を下せないわけです。あばたもえくぼ、ということわざがあるくらいで、これは昔からある人間の特性といえます。しかし、投資において「あばた(本来は欠点や短所になる部分)」を「えくぼ(長所)」と評価してしまうのは問題です。本当は投資すべきでない相手も「好きだから」の一点で許してしまったりします。
好きな会社への投資で、一番よくないのは、評価が甘くなることです。長い目でみて評価をしているのならいいのですが、単に愛着が出てしまって、売るのをためらうようでは「好きな会社の投資」は失敗例になってしまいます。
株価が下がっても「応援しているから売らない」という人がいますが、基本的に言い訳です。あなたが株をちょっと持っているくらいで、企業の株価が下げ止まることはありませんし、応援している気持ちで業績が回復することもありません。
投資は「冷静と情熱のあいだ」で評価をすべきですが、好きな気持ちがこれを邪魔します。これが反対する第2の理由です。