多様な食文化を誇る 「おいしい国」クロアチア
「クロアチア料理って、どんな料理?」 シーフードのイメージが強いかもしれませんが、クロアチア料理は実に多種多様!トルコからハンガリー、ドイツ、イタリアまで、たくさんの国の料理がクロアチアにギュッと凝縮されています。
実はクロアチア料理を一言で表すのは至難の業。「クロアチアにクロアチア料理はない」なんて言われることも……。それはクロアチアが歴史的・地理的に周辺諸国の様々な影響を受けてきた故です。トルコやハンガリー、オーストリア、イタリアに至るまで、様々な国の食文化の影響を受けたクロアチアの料理は、地域によって異なる国のような違いがあります。大まかに分けると……
- アドリア海沿岸部:イタリア料理(地中海料理)に似たシーフード中心の料理
- 内陸部:主にトルコ、ハンガリー、オーストリアの影響を受けた肉を中心とした料理
ですが、クロアチア料理について語りだす前に、まずは一杯ここで乾杯しましょう。席に着いたらまず、食前酒としてラキヤ(Rakija)と呼ばれる、プラムやアプリコットなどの果物や蜂蜜を醗酵させて作る蒸留酒で乾杯をするのがクロアチア流。 強いお酒(アルコール度数40%程度)ですが、小さなグラスに入ったラキヤを乾杯のあとにグッと一気に飲み干します。それでは「ジヴェリ(乾杯)!」
「人生も料理もシンプルに」アドリア海沿岸部の料理
アドリア海沿岸部、特にダルマチア地方で食べられる料理は「ダルマチア料理」と呼ばれ、地中海料理に分類されます。ダルマチア料理はアドリア海を挟んで対岸にあるイタリア料理との共通点も多く、日本人の味覚にもよく合います。ダルマチア料理の主役はアドリア海で獲れた新鮮なシーフードと野菜。これらの食材をオリーブオイルやニンニク、ローズマリーやセージ、バジルなどのハーブやスパイスをふんだんに使用して調理するのが特徴です。ダルマチアの人たちはこう語ります「人生も料理もシンプルが一番!」。あまり余計な味付けはせず、素材の味を最大限に引き出すのがダルマチア流なのです。
ダルマチア地方で食べたい前菜
そんな伝統的なダルマチア料理を提供するレストランは「Konoba(コノバ)」と呼ばれ、新鮮なシーフードと共においしいワインも楽しめます。まず、前菜として定番なのはタコのサラダ。アドリア海で獲れた新鮮なタコをブツ切りにして、オリーブオイルと塩、パセリ等のハーブで味付けしたダルマチア名物です。また、この地方の特産である生ハム、プロシュートやチーズも見逃せません。特にパグ島の羊乳チーズは世界のグルメ通も認める逸品です。前菜の次は新鮮な魚から作ったフィッシュスープをどうぞ。丁寧にほぐされた魚の身、オリーブオイル、ガーリック、セロリなどの野菜、そしてお米が入っているのが定番です。これもまた魚の出汁を最大限に活かし、ダルマチア流にシンプルであっさりとした味に仕上げられています。
ダルマチア地方で食べたいメインディッシュ
クロアチアでぜひ食べてほしい伝統料理「ペカ」
また、日本人の口によく合うのが、ブロデット(Brodet)と呼ばれるダルマチアの伝統的な煮込み料理。魚や貝などのシーフードに野菜とハーブを加え、トマトベースのスープで煮込んだもので、パレンタ(Palenta)というコーンミールを茹でたものと一緒に食べられます。ところで、“パレンタ”はイタリア語。ここにもローマ帝国やベネチア帝国がこの地域を長い間支配していた影響を垣間見ることができます。 「シュカンピ(手長エビ)のブザラ」も人気の一品! シュカンピ(Skampi)はグリルにしたり、リゾットやパスタと一緒に食べてもおいしいですが、特に人気なのがブザラ・スタイル。“ブザラ(buzara)”とはもともとクロアチア語で“シチュー”を意味しますが、一般的に白ワインにニンニクやオリーブオイル、ハーブなどを加えて煮込んだシーフード料理のことを指します。
ところでシーフードが目立つダルマチア料理ですが、ダルマチアの人はお肉も大好きで、特にラム肉や牛肉が好んで食べられます。特におすすめなのはパシュティツァーダ(pasticada)。にんじんやニンニク、ハーブ、赤ワインなどと一緒に、長時間煮込こまれた牛肉はやわらかく、舌の上でとろけるよう。一度食べると忘れがたい料理になること間違いなしの逸品です。 ダルマチア地方、特にストンという町に立ち寄る際に食べていただきたいのが牡蠣とムール貝。ストンはクロアチアを代表する牡蠣の産地で、牡蠣の養殖が盛んに行われています。レモンをギュッと絞った獲れたての新鮮な牡蠣は地元産のワインとよく合います。一方、ビールとの相性が抜群なのが、小ぶりなイカを豪快にグリルしたイカのグリルやイカのから揚げ。どちらも日本人に大人気のメニューです。もちろん、定番のシーフードリゾットやイカ墨のリゾット、シーフードパスタやシーフードピザもお忘れなく!
「美食の地」イストラ地方
「美食の地」や「食材の宝庫」と称えられるイストラ地方。海と山のどちらもを抱えるイストラ半島では、海の幸と山の幸の両方を存分に味わうことができます。地理的・歴史的にイタリアとの関わりが深いイストラ地方は、食文化もその影響を強く受けています。例えばマネストラ(Manestra)という野菜たっぷりのスープはイタリアのミネストローネ、フリタヤ(Fritaja)というオムレツのような食べ物はイタリアのフリッタータによく似ています。またイタリアやクロアチアのダルマチア地方と同じく、オリーブオイルやワインの製造が盛んで、特にオリーブオイルの品質の高さは世界にも認められている程です。 ところで、クロアチアのイストラ地方は知る人ぞ知るとトリュフの産地! しかも黒トリュフのみならず、珍しい白トリュフもたくさん採れます。ちなみに、現在ギネス世界記録に認定されている世界一大きなトリュフはクロアチアのイストラ地方で採れたものなんですよ。
トリュフ狩りのシーズンは毎年9月~1月下旬頃。この時期になると多くのトリュフハンターが愛犬を連れて森に入ります。特にモトブン周辺の町では、地元で採れたトリュフをふんだんに使ったトリュフ料理が食べられるお店がたくさんあり、秋から冬にかけて旬のトリュフを食べようと多くの人が訪れます。おすすめはトリュフをトッピングした贅沢なステーキや、トリュフをふんだんにあしらったパスタ。せっかくパスタを食べるのなら、「フジ(Fuzi)」と呼ばれるイストラ地方の伝統的なパスタをご賞味ください。薄く延ばした生地をくるっと巻いた筒状のパスタで、ふわっと軽い食感が特徴的です。
前菜にはオリーブの実が添えられた自慢のプロシュートと自家製チーズの盛り合わせを、メインディッシュにはトリュフを贅沢にトッピングしたジューシーなお肉やパスタを、地元産のワインと共にご堪能ください。デザートにはもちろん、名物のトリュフアイスクリームを! 贅を尽くしたイストラの食を、ぜひ本場でご満喫ください。
その他、内陸地方の料理
「ザグレブ風カツレツ」薄い肉でチーズやハムを巻き、カリッと揚げたカツレツ
また、ザグレブを中心に冬(特にクリスマスのシーズン)によく食べられるのが七面鳥のローストのムリンツィ添え。ムリンツィ(Mlinci)とは大きく平べったい乾燥パスタの一種で、茹でた後にローストしたお肉の肉汁に絡めて、お肉に添えられます。 同じパスタの仲間で、特に人気が高いのがシュトゥルクリ(Strukli)というザゴリエ地方やザグレブの伝統料理。パスタ生地をうすく大きくのばし、中にフレッシュチーズや卵を入れてくるくると巻き、オーブンで焼き上げます(オーブンで焼くのではなく、茹でる場合もあります)。よく「ザグレブ風ラザニア」と表現されるシュトゥルクリですが、ラザニアよりも更に濃厚なチーズの風味とモチモチの食べごたえが特徴的で、一度食べるとやみつきになる人も多いんです。ちなみに、このシュトゥルクリはユネスコの無形文化財にも登録されている程、伝統ある料理なんです!
一方、スラヴォニア地方はハンガリーの影響を強く受けた料理が多く、ハンガリー料理を代表するグーラッシュはもちろん、パプリカをたくさん使った料理がよく食べられます。そんなスラヴォニア地方の名物は「クーレン(Kulen)」。日本でもスペイン名物として知られるチョリソーに似たピリ辛ソーセージです。豚肉のミンチから作られるスモークソーセージで、ビールやワインのおつまみにもぴったり。スライスされたチーズやトマトと共に前菜として食べられたり、ピザのトッピングにもよく登場します。 最後になりましたが、クロアチアのレストランの料理は日本人にとって1人前の量が多いとよく言われます。たくさんの種類の料理を食べたい方は、注文時に「2人で分けたいので(前菜やメインディッシュ)1人前を半分ずつに事前に分けてもらえますか?」とウェイターにお願いすると、大抵の場合快く聞き入れてもらえます。それではクロアチアでの滞在中、時間と胃袋が許す限りたくさんの「おいしいクロアチア」を発見してください!Dobar Tek(“ドーバル・テーク”、召し上がれ!)!