カフェも設置されているユニークな住宅展示場
その展示場は、JR武蔵野線の「越谷レイクタウン駅」に隣接するその名も「越谷レイクタウン住宅展示場」です。現在、5棟のモデルハウスが建設されており、最終的には8棟で構成される計画。もちろん、全てスマートハウス仕様です。このモデルハウスとセンターハウス(展示場の受付施設)は電力網と通信網でつながり、「マイクログリッド」という仕組みを構築しているのが最大の特徴。このような仕組みのある展示場は全国初といいます。センターハウスにはカフェも入っており、その点でも大変ユニークですね。
展示場は、実は平日には人が少なく閑散としている場所。カフェが入ることによって地域の人たちにとって身近な場所に変わりますし、さらに住まいや暮らしに関する様々な情報が得られる、私たちにとってより活用の幅が広がる場所に変わるかもしれません。
話を元に戻すと、この展示場は全体が「街」、小規模なスマートタウンなのだとイメージしてもらえると良いのだと思います。で、この展示場のモデルハウスはスマートハウスですから当然、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)が搭載されています。
そして、センターハウスにはAEMS(エリア・エネルギー・マネジメント・システム)が備え付けられており、これが各モデルハウスのHEMSとつながることで、街全体のエネルギーのコントロールを可能としているというのが、この展示場の面白いところなのです。
まず、これにより展示場全体でどのくらいエネルギーが使われているのかを把握できます。さらにモデルハウス各棟には太陽光発電システム、中にはエネファーム(燃料電池)を搭載しているものもありますから、それらがどれくらい発電しているかも、把握することができます。
「マイクログリッド」という仕組みを採用
まだまだ、他とは異なる特徴があります。電力会社から購入する電力はセンターハウスで一括購入し、各モデルハウス(各棟にはスマートメーターも設置)に振り分けて供給する仕組み。さらにセンターハウス内には、大容量の地域蓄電システムも用意されています。これらより、エネルギーの需給がAEMSがあるセンターハウスで一括管理されることになります。例えば、モデルハウスのどれかで電気を購入しなければならなくなった場合、電気が余っているモデルハウスから電力をもらえるわけです。
また、東日本大震災のような大規模災害が発生した場合、この展示場で発電された電力と、蓄電された電力を周囲に供給することが可能となります。もっとも、現状ではシステムが展示場内の運用に限られていますから、このような事態になった場合は展示場周辺の街灯などへの電力供給に限られるそうですが。
いずれにせよ、「マイクログリッド」という仕組みはこういうこと。例えば、市町村単位でエネルギーの需給状況がどのようになっているかを把握し、エネルギーの供給を最適に行えるようにすることで、より省エネルギーな社会を作ろうという考え方です。
ちなみに、例えば都道府県単位などより広域なエネルギーの需給動向がわかる仕組みを「ラージグリッド」といい、これらを構築した社会全体のことを「スマートグリッド社会」といいます。「越谷レイクタウン住宅展示場」の取り組みは、このスマートグリッド社会の先駆けというわけです。
ですので、この展示場には「スマート街区先導モデル事業」として、埼玉県と越谷市から補助金も出ています。そのため、10月29日には、上田清司県知事などが視察に訪れ、展示場内を時間をかけて熱心に見学していました。次のページでは、改めてなぜ「スマートグリッド社会」が必要なのかについて考えていきます。