インターネットによる情報流出と価格競争
さらに、追い打ちをかけたのが、インターネットによる情報社会です。インターネットにより、官民からの情報の流出が起こりました。士業は、物品を売るのではなく、知識を売るのです。その知識を一般国民が無料で手にする機会が圧倒的に増えました。
その結果、自己申請や本人訴訟などが多くなったのです。つまり、行政書士に限らず、相対的に士業の仕事が減少しているのです。
加えて、ホームページの閲覧、メールによる見積依頼により、最安値の事務所を探すことも容易になりました。その結果、過酷な価格競争に突入していったのです。構図は、ファストフードの牛丼値下げ合戦と何ら変わりはありません。
一例を挙げましょう。会社設立の手続き報酬は、以前、10万円前後でしたが、今では3万円前後で引き受ける行政書士も少なくありません。税理士に至っては、会社設立後、年間の顧問契約を締結するなら、会社設立を無料で行うことをうたう事務所すらあるのです。
このように、東京は、過酷な競争を強いられており、インターネットがその競争に拍車をかけているというのが実情です。
フロンティアとしての地方
一方で、地方ではどうでしょうか。地方にはまだフロンティアが残されているのでしょうか。地方は競争相手が少ないというメリットはあります。行政書士も法律家として一定の役割をはたしているようです。地方の先生の仕事を聞くと、東京ではおそらく弁護士が書類を作成するような書類を作成していらっしゃいます(弁護士法に反しない書類です。念のため)。
簡単に言えば、地域や場所によって、行政書士に希少価値が生ずるのです。また、行政書士会から仕事の割り振りを受けたこともあるそうです。東京では、考えられないことです。
ここまで聞くと、地方の方がよさそうな印象を受けるかもしれません。しかし、物価の関係もあるのでしょう、報酬の値段が何割か安い印象を受けます。また、仕事数は、東京と比べれば少ないはずです。
狙いは現地型の仕事?
例えば、現地調査が必要な仕事など、その土地に土着した許認可や契約書など現地型の仕事は、東京の事務所などに浸食されていない印象を受けます。つまり、地の利の悪さが、逆に地の利になっていると言ってもいいかもしれません。高齢化が進む地方ならば、成年後見などの仕事は増えていくでしょう。東京の行政書士が九州や東北の成年後見人になることは不可能です。なぜなら、慣例として行われている毎月一回の本人との面接だけで、赤字になってしまうからです。
このように、地方では、行政書士というブランド力もあり、現地型の仕事というフロンティアがまだあるように思います。
最後に
東京で生き残るには、付加価値をつけて仕事の価値を高めるか、又は、抜きんでた個性を売りにするなどによりブランド化すること、いずれにせよ、価格競争と一線を画することだと思います。一方、地方で生き残るには、地域性を活かして、根の張った人脈で仕事をとっていくこと、これが大事だと思います。地方で活躍されている先生方をみると、このような印象を受けます。