アート・美術展/アーティストはどういう人?

“描かない”絵画、川北ゆうさんのアート(2ページ目)

アート作品をつくる人=アーティストとは、どういう人なのでしょうか。いま生きているアーティスト、つまり現代美術のアーティストに直撃。今回は川北ゆうさんに、制作や作品の背景、アーティストの生きかたについて話を聞いてみましょう。

藤田 千彩

執筆者:藤田 千彩

アートガイド


どうやってつくるの?


川北さんの作品のつくりかたは、画面の大きさによって異なります。写真のような小さな作品の場合、水槽に板を沈め絵具を入れてドローイングをし、水をスポイトで吸って行きます。

 

水槽の水をスポイトで丁寧に取って行きます

水槽の水をスポイトで丁寧に取って行きます

「筆はつかいませんが、水と絵具をあやつる私の制作方法では、腕や手の動きが重要です。この小さい作品のような場合は、水の微かな動きを捉えるようなつくりかたをします。画面が大きい場合では、自分自身の体の動きも大きくなります。私の意志とは関係なく、水の流れには強弱があるので、その流れに沿って水の動きを大きく感じるような作品になるのです」。
濡れた板は時間が経つと乾燥し、絵具が板に定着します。このような制作スタイルは、おそらく川北さんのオリジナルでしょう。

 

作品は見た目も中身も大切

川北さんの作品を見たとき、私は「気持ちよく吸い込まれそうだ」と思いました。皆さんは何を感じるでしょうか。川北さん自身は「形」を表現したいのではなく、そのものの「本質」を探りたいそうです。

 


川北ゆうundefined2013.9.26/タイルにアクリル絵具/398x398mm/2013

川北ゆう 2013.9.26/タイルにアクリル絵具/398x398mm/2013


川北ゆうundefined2012.5.8/パネルに油彩/800x1200mm/2012

川北ゆう 2012.5.8/パネルに油彩/800x1200mm/2012

「たとえば緑色をつかった作品では、葉の色をそのまま再現しているのではなく、私があるとき見た葉の色、遠くの霞が掛かった山の色、といった緑色をいくつも思い出して、緑色をつくります。自分の手で直接線を引くのではなく、水のゆらぐ線をそのまま画面に定着させることで、より自然のさまを表現できるような気がしています」。
こうした作家のコンセプトを知ることは、現代美術の作品を見るときの糸口にもなります。つまり、作品は見た目だけでなく、中身も大切なのです。

アーティストの生活


アトリエ周辺

アトリエ周辺

今回取材でお邪魔した川北さんのアトリエは、今年2013年の大型台風で近くの川が氾濫し、浸水被害を受けました。
「いまはアトリエを片付けながら、来年の展覧会の作品制作に専念しているところです。被害にあったことで、今まで以上に自然について考える時間も多くなりました」。
苦悩や悲しみさえも、川北さんのこれからの作品に反映されるかもしれませんね。

 

■今後の展覧会スケジュール

「VOCA展2014」
上野の森美術館
2014年3月15日(土) ~ 3月30日(日)

■プロフィール
川北ゆう(かわきた・ゆう)
1983年京都府生まれ。2006年京都精華大学芸術学部造形学科洋画分野卒業。現在、国内外で個展やグループ展で作品を発表している。
http://www.yukawakita.com/

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