見直される開口部「窓」の役割
そうした価値観の変化を受けてか、これまであまり注目されてこなかった「開口部」が再び注目されています。弊社が震災1年半後に主婦300人に聞いた調査では、主婦が住みたいと思う家の上位に、「太陽光発電や蓄電池、HEMSなどの最新設備がある先進的なスマートハウス」(36.9%)に拮抗する形で、「太陽や風や緑など自然の力を取り込んだ家」(34.2%)がランクインしました。 東日本大震災後の価値観の変化として、「モノから心へ」という底流変化のほかに、エネルギー問題が今も議論が終わらず、「ハイテクで先進的で便利な家が果たしていいのか」ということは、多くの日本人の頭に疑問符がよぎっているのではないでしょうか。だからといって「山や森の中で100%天然生活」するまでにはいかない、都市部でほどよく利便性を享受しながらスローライフな暮らしをする…というのが理想に近いスタイルなのではないでしょうか。
スローライフな住まいには、戸外の自然や緑とのつながりが感じられる「窓」が大きな役割(写真提供:積水ハウス)
「休日は窓を開けてテラスやバルコニーでブランチをとる」
「休日のブランチは庭の菜園で摘んだハーブや野菜を使う」
「休日に庭で友人家族を呼んでバーベキューをする」
「昼下がり、子どもたちが帰ってくるまでの間、窓からの風を感じながらお茶をしたり読書をする」「秋の夜長、虫の鳴き声を聞きながら夫婦でワインを飲む」
…と、不思議なくらいに「窓」「外」「庭」の要素が入ってきます。
震災で変わった「中・外の融合」
こうした「住宅における中と外の融合」は古くから住宅業界のテーマでもありました。住宅が都市化し隣家との距離が密接し始めたころは、「外に閉じ、中に開く」住宅がもてはやされ、外壁は堅牢な城壁のように閉じていながら、中には家族だけの箱庭があったり。しかし東日本大震災後、「他人との助け合い」「ボランティア」「エシカル消費」が当たり前となる中で「自分たち家族だけ」という価値観も薄れました。「家族は大事だけど、もっと家族全員で外に開こう」という意識は、子どもの閉じこもりへの反省もあって、見直されているような気がします。