認知度の高い公衆衛生学会
学会という言葉をご存知でしょうか? 一般の方々には、医師が集まる場としての認識が強いようですが、実は保健師が関連する学会もいくつかあります。そのなかで、もっともよく知られているのは日本公衆衛生学会ではないでしょうか。その名の通り、公衆衛生に携わる人々(公衆衛生医、看護師、保健師、大学教員、管理栄養士など)が集うもので、総会を兼ねた学会は年に一度、主題を決めて全国の主要都市を会場にして3日間ほどの日程で開催されています。参考までに過去5年の開催地と主題をご紹介しますと
- 平成25年(第72回、三重県津市) 変革規我が国の公衆衛生学の現状と課題 隣接諸科学との対話
- 平成24年(第71回、山口県山口市) 健康リスクへの先見的対応の展望と公衆衛生の課題
- 平成23年(第70回、秋田県秋田市) 公共性の地平からみた公衆衛生の将来展望
- 平成22年(第69回、東京都千代田区) 公衆衛生の発展に向けて ―調査研究から政策へ―
- 平成21年(第68回、奈良県奈良市) 健康をまもる社会基盤の再構築 ―安全・公正・交流―
小さな発表にも注目
では、なぜここに多くの保健師が参加しているのかというと、やはり公衆衛生全般の流れをしっかり把握する必要性があること。大きな会場で行われる研究者の議論や発表もさることながら、ポスター会場と呼ばれる展示会場で、畳1畳分ほどのポスターを使用しながら発表される各地の取組み例を勉強することを目的にしている方もいるようです。また、学会の夜の部には自由集会という、公衆衛生に関連した課題について幅広い議論をすること。さらに関連する保健担当者や研究者の交流を目的とする集会もいくつか行われています。ここで自分たちの思いを訴えることもできるわけです。
参考までに、私自身もこの公衆衛生学会は仕事はもちろん、自分の勉強のために参加することがありますが、一番興味を持って見ているのはポスター会場での発表です。なぜかというと、各地の現場で頑張る保健師さんの「気持ち」が伝わってくるからです。発表の持ち時間はおよ5分程度(発表3分、討論2分)と短く、あっという間に終わってしまいますが、事前に誰がどのような発表をするのか調べ、興味のあるものは極力行くようにしています。
正直な話、主題の講演よりも、こちらのほうがワクワクするからです。そして、気になる発表をした方にはできるだけ声をかけ、話をするように心がけています。きっと、同じような気持ちで参加されている保健師さんも、多いのではないでしょうか?
公衆衛生の分類
ちなみに、演題は以下のようにかなり細かく分類されています。こうして見ると、公衆衛生学会がとても幅広い分野を網羅していることが分かりますね。*分類は第72回、三重大会のものです。
- 第1分科会 疫学・保健医療情報 統計情報、疫学研究、保健医療情報など
- 第2分科会 ヘルスプロモーション 健康増進、健康日本21、特色ある地域活動事例など
- 第3分科会 生活習慣病・メタボリックシンドローム がん、循環器疾患、高血圧、骨粗鬆症、特定健診、特定保健指導など
- 第4分科会 保健行動・健康教育 禁煙(たばこ対策)、節酒、睡眠、健康教育手法など
- 第5分科会 親子保健・学校保健 小児保健、児童虐待、育児支援、すこやか親子21、学校保健など
- 第6分科会 高齢者のQOLと介護予防 ADL、生きがい、転倒予防、認知症予防、閉じこもりなど
- 第7分科会 高齢者の医療と福祉 在宅医療、終末期医療、高齢者介護、高齢者虐待など
- 第8分科会 地域社会と健康 社会格差、健康格差、ソーシャルキャピタル、市民活動など
- 第9分科会 難病・障害の医療と福祉 特定疾患、在宅医療、障害者の医療と福祉など
- 第10分科会 精神保健福祉 うつ、統合失調症、自殺予防、薬物依存、ひきこもりなど
- 第11分科会 口腔保健 口腔ケア、う歯、歯周病関連、8020運動など
- 第12分科会 感染症 HIV、性感染症、結核、ウイルス性肝炎、予防接種、検疫など
- 第13分科会 健康危機管理 リスクコミュニケーション、新型インフルエンザ、新興感染症、災害など
- 第14分科会 医療制度・医療政策 医療費、医療経済、医療制度、医療計画、医療安全、医療の質など
- 第15分科会 公衆衛生従事者育成 教育、活動支援、専門性など
- 第16分科会 保健所・衛生行政・地域保健 保健所機能、行政課題、地域連携、地域保健、医療研修など
- 第17分科会 公衆栄養 食育、栄養疫学、食生活指針など
- 第18分科会 健康運動指導 身体活動、体力、運動など
- 第19分科会 食品衛生・薬事衛生 食中毒、食の安全、成分表示など
- 第20分科会 産業保健 雇用労働環境、職場のメンタルヘルス、産業医・産業看護活動など
- 第21分科会 環境保健 生活環境衛生、地球環境など
- 第22分科会 国際保健 グローバリゼーション、プライマリヘルスケア、国際保健医療協力など