住宅購入後のコストはローンの支払いだけではない
一昔前に住宅を購入した人は、これから購入する人がうらやましいに違いありません。住宅ローンが空前の低金利だからです。全期間固定金利のフラット35は1.1%台(返済21年以上)。高品質住宅対象のフラット35Sなら0.8%台にまで下がっています。さらに変動金利なら、0.4%台も登場。この金利だと、3000万円を借り入れても、35年返済で返済額は月7万7000円ほど。しかも、頭金がゼロでも金融機関で借り入れできるケースが増えてきました。もはや住宅は「買いたい」と思えば、気軽に購入できるわけです。とは言え、超低金利のうちに買わないと損だからという考えは危険です。中には「大丈夫。ローンの支払いは年収の4分の1に抑えたから、返済も安心」という人もいるでしょう。確かに、住宅ローンの目安としてこの数字は半ば常識となっていますが、本当にそれで安全なのでしょうか。
まず、年収を引き合いに出す場合、税込額か手取額かで目安となる金額が異なってきますが、ここでは手取額で考えてみます。
年収が夫婦(夫/正社員、妻/パート)合わせて税込500万円の家庭の場合、手取額はおよそ420万円(税金や社会保険料を差し引いたと仮定した概算)。この4分の1は105万円ですから、ボーナス併用のローンを組まなければ、毎月のローン返済額は8万7500円になります。そして、この額がもし、今、支払っている家賃とほぼ同額なら、無理のないローンと考えてしまいがちです。
しかし、住宅購入後に発生する支出は住宅ローンだけではありません。マンションであれば管理費や修繕積立金が毎月かかります。しかも中古物件だと、途中でこれらコストが値上がりするという例も少なくありません。もちろん、クルマがあれば駐車場代もかかると考えておくべき。加えて固定資産税や都市計画税(市街化区域など)も発生します。
こういったランニングコストは、新築の平均的ファミリー物件の場合、年間50万~70万円。つまり、住宅ローンに月4万~6万円が上乗せされた額が毎月、定期的に支出されるということです。一戸建ては、管理費や修繕積立金がない分、家の補修(外壁、屋根、外溝等)に関しては独自に用意する必要があります。やはりランニングコストとして、月3万~4万円は発生すると考えていいでしょう。
住宅購入以外に押し寄せる大きな支出の波
住宅ローンを組む場合、ランニングコスト以外にも考えなくてはいけないことがもうひとつあります。それが、今後の生活設計に合わせたマネープランです。まずは教育費。学校教育費に、習い事や進学塾など学校外教育費を加えれば、子ども1人に平均1100万~1200万円はかかる(高校まで公立、大学は文系 私立の場合)といわれています。現行での児童手当や高等学校等就学支援金制度を考慮しても、少なくとも900万円前後は必要ということになります。子どもが2人なら、当然その額も2倍です。
また、遅くとも40代後半には老後資金も準備すべき時期となります。さらには、クルマの買い替えや住宅のリフォームといった、数百万円単位の大きな支出もあるはず。家族旅行だって、夏休みや年末年始に行けば、それなりの費用です。
これらに対処するには、ローンを利用する方法もありますが、住宅ローンが完済しないうちは、別途ローンを組むのは避けるべき。となれば、貯蓄して備えるしかありません。各家庭によって、その金額に幅はありますが、少なくとも月額3万~5万円は貯蓄できる家計にしておくことが望ましいでしょう。
■住宅ローンで考慮したいコストと備え
例えば、先に示した税込み年収500万円の家庭が「年収の4分の1」を目安に上限までローンを組んだとします。その上限である8万7500円にランニングコストが上乗せされて、住宅コストの平均月額が13万5000円かかるとしましょう。それとは別に、月に3万~5万円貯蓄ができるかどうか。それが可能なら「年収の4分の1」を目安にしていいでしょうが、難しいようなら、住宅ローンを組む目安はさらに低く見積もる必要があります。
「そんなにあれこれ心配したら家なんて買えないよ」という意見もあるはず。ごもっともです。もちろん、希望する住宅が買えるなら多少のことは我慢できるかもしれません。それでもいろいろなコスト、ライフプランへの備えを頭に入れながら、じっくりと資金計画を立てることだけはぜひ実践してください。