行き場のない10代の思いを音楽にぶつけた
■作品名回帰線(1985年)
■アーティスト名
尾崎豊
■販売元
ソニーレコード
■おすすめ理由
80年代と聞いて最初に頭に浮かぶのはこのアルバムです。
1983年にシングル「15の夜」とアルバム「17歳の地図」で鮮烈なデビューを果たした尾崎豊。1992年に26歳の若さでこの世から去るまで6枚のアルバムをリリースしました。
その中でも個人的に1番心を強く揺さぶられるのがこの「回帰線」です。このアルバムがリリースされた1985年頃、バブル経済前の右肩上がりの雰囲気に大人たちは浮かれ、10代は行き場のない怒りをどこにぶつけていいのか分からず彷徨っている……そんな時代だったと思います。
そんな時に彗星のごとく登場した尾崎豊。彼はそれまでJ-POPの概念を覆す楽曲で10代の若者たちを熱狂させました。教師や大人たちへの怒りを歌にした「卒業」、愛する人に痛いほどの気持ちをぶつける「シェリー」、夜の街を彷徨う若者たちの姿を歌った「ダンスホール」、渋谷のスクランブル交差点をモデルにして作った「Scrambling Rock'n'Roll」 等、甘い恋愛ソングではない、体の底から絞り出すような声で歌われる10曲が収録されたこのアルバムは彼の代表作と言えるのでないでしょうか。
大人になって聴いてみると
10代の頃、私もこのアルバムをまるでバイブルのように聴いていました。そしてある日……尾崎がこの世からいなくなったことを知り、大きなショックを受けました。
26歳でこの世を去った尾崎豊が10代の時に作った楽曲達。やっぱり今聴いても強く響くものがあります。歌詞にほんの少しの気恥ずかしさも感じつつ、この「回帰線」を聴いていると自分の心がいつの間にかあの頃に戻ったような気がするのです。大人たちの矛盾ばかりが目につき、学校が嫌で仕方なかった10代……もうとっくに自分が「大人」になってしまったのに。
尾崎の歌はその歌詞がクローズアップされる事が多く、勿論特徴的ではあるのですが、彼の大きな魅力の1つがその歌声にあると思います。基本、ハスキーでありながら実は高音も綺麗に伸びる、ちょっとガサついたあの声。
「回帰線」のジャケット写真、必死に何かにしがみついているようにも何かに登ろうとしているようにも見える尾崎の姿。80年代を代表する1枚だと思います。