聴けば聴く程アルバムの良さが伝わってくる一枚
■アルバム名ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク
■アーティスト名
ザ・バンド
■おすすめ理由
良いアルバムの良さ……それを言葉で表現する際に困る場合があります。
何故なら、理屈をいくら並べ立てても、実際に聴いたその耳で判断し、
「ああ、これはいいかな!」という感覚の問題そのものだからです。
68年にリリースされたザ・バンドのこのアルバムこそそんな一つです。
66年にバイク事故を起こし、音楽活動から遠ざかっていたボブ・ディランの活動再開を手助けする為、ザ・バンド(当時ホークス)のメンバーが集まり、翌67年、ウッドストックに借りた大きな一軒家にて、ディランと共に生活しながら、その地下室でセッションを繰り返し、曲を創り上げ録り収めた時期があります。
その音源自体は別なアルバムとして世に送り出されましたが、このアルバムのタイトル「ビッグ・ピンク」にも、その流れが汲まれていると言っても良いでしょう。
実際に借り上げた一軒家の外壁がピンク色であることから、近所の人々からそう名付けられたという逸話があります。ただしこのアルバム収録自体はニューヨークで行われている為、事実上ビッグ・ピンクとは関与はしていません。
60年代後半はサイケデリックやフラワー・ムーヴメントが主流だったアメリカ音楽界に於いて、
ゴスペル、ブルース、ルーツ・ミュージックに視点を置き、かつカナダ人(メンバーのほぼ全員)による解釈というのが、独特な響きとウネリと化して活かされています。
聖書の内容を引用した難解な歌詞もありつつ、土臭く懐かしい、どこか遠くから響くような荘厳さが全体を包んでいます。
きっと地味に時間を費やすから、聴き慣れないと損した気分になるかもしれませんが、
聴けば聴く程、自分の成長とも相関するような気がしてなりません。
つまり段々判ってくるのです、これが良いアルバムだという事が。
ちなみにアルバムジャケはボブディラン直筆、
そしてピンクの家は、オーナーも移り変わりつつ現存されています。