ブラックジャックと彼を取り巻くさまざまな人とのエピソード
■作品名ブラックジャック
■作者名
手塚治虫
■巻数
新書版:全25巻、文庫版:全17巻、大全集版:全15巻、など
■おすすめ理由
手塚治虫先生の代表作の一つであり、医療漫画の先駆けにもなった『ブラックジャック』。
子どものころは、手術の描写が怖くて(てっきりスプラッター漫画だと思っていました……)手に取ることもできませんでした。
大人になってから改めて読んでみると、その人物描写の深さに驚きます。
ストーリーは今さら語るまでもありませんが、神業的な腕を持つ、無免許の天才外科医・ブラックジャック(以下、BJ)と、彼を取り巻くさまざまな人間・さまざまなエピソードを描いた作品です。
医療を扱った作品だけに、生命・道徳・倫理など、重く複雑なテーマをはらんでいます。
手塚先生ご自身が医学生であったことも、作品に大きく影響しているようです。
読んでいて気になるのが、BJの優秀な助手であり、
自称「ちぇんちぇいの奥さん」でもあるピノコとBJの「微妙な関係」。
二人は同じ屋根の下で暮らしているのですが、見た目が幼児のピノコがBJの奥さん、
あるいは恋人というのは、どう考えても無理がありすぎ。
それでもピノコはかいがいしく日々の家事をこなし、手術となれば助手を務め、BJの行くところどこにでも付いていきます。そして、ことあるごとに「ちぇんちぇい、愛してゆ~」。
エピソードをたどってゆくと、ピノコはBJの元患者。BJによって救われ、存在意義を与えられた……という過去があるのです。
BJの方は、ピノコを娘のようにも思っている様子ですが、この二人のやり取りが何とも微笑ましく、普段はクールでニヒルなBJの人間性を垣間見られる重要なシーンでもあります。
ちなみに、手塚先生のアシスタントを務めていた方々をはじめ、多くの漫画家が『ブラックジャック』のリメイク版を執筆しています。
描き手によって、ブラック度が増していたり、えらくハンサムになっていたり、
ピノコが美少女キャラになっていたり……。
リメイク版ならではの面白さがあります。
手塚先生が亡くなってもう何年も経ちますが、
残された作品および登場人物はその後も長く生き続けているのですね。