絶対に風化してはならない原爆の現実を描いた名作
■作品名はだしのゲン (1973~1985)
■作者名
中沢啓治
■単行本
全10巻、愛蔵版全10巻、コミック版全7巻
■おすすめの理由
最近、この「はだしのゲン」を巡り、「描写が過激」と図書館で閲覧禁止になったり「思想的だ」と一部で問題視されたことで、逆に宣伝効果となり、リバイバルの売り上げがアップしている話題のマンガです。
日本では色々な意見がありますが、作者自身が体験した原爆を落とされた広島の惨状や当時の時代背景などをリアルに描きながらも、エンターテインメント性も高いことから、海外でも非常に評価の高い作品です。
「読んでおきたい日本史モノマンガランキング」の1位にも選ばれました。
■あらすじ
舞台は1945年の終戦間際の広島市。
ゲンの父親・大吉は、反戦思想の持ち主であったために、周囲の人々から「非国民」と嫌がらせを受けていた。
原爆投下後、ゲンは家族を失い、原爆症で毛髪が抜け落ち、死への恐怖に怯えながら妹の友子のために食糧を得ようと奔走する……。
最初に読んだ時には衝撃的な内容でしたが、読んで良かったと思える作品です。
日本に2つも落とされた原子爆弾、失われた数えきれないほどの命と、
その放射能の影響で後遺症に苦しんでいる多くの人達。
まさに現実だったことを無かったことにして、口当たりの良い歴史の部分だけを知りたいとは思わない……。二度とこのような悲劇、そして戦争を繰り返さないためにと、深く感じさせられた作品です。
「はだしのゲン」は、広島生まれの先輩が教えてくれました。
彼女のおばあさんが被ばく症に苦しみながら亡くなったそうで、「絶対に風化してはならない」との思いが強く、一人でも多くの人に読んで考えて欲しい……と語っていました。
海外の友人や知人も驚くほど読んでいる人が多く、政治的な思想云々ではなく史実として伝えなければ……という意見をよく聞きます。
日本人だけではなく、国の垣根を超えて、世界中の人々に読んでもらえればいいなと思う作品です。