行方不明のアインシュタインの脳を求める杉本氏を追った作品
『アインシュタインの脳』(Einstein's Brain)

■監督
ケビン・ハル

■主演

杉元賢治

■VHS販売元
ポニーキャニオン

■おすすめの理由
本作はイギリス国営放送BBCが94年に製作したドキュメンタリー映画です。

今回この作品をお勧めしようと思ったのは、いたって普通のドキュメンタリー映画の形式ながら、テイストがとてもとても変わった奇想天外な作品だからです。

恐らくトンデモ映画ともまた違うカテゴリー不明の怪作で、鑑賞後に表現し難い奇矯な余韻が残ります。

お話はいたって単純です。アインシュタイン研究家でコレクターの近畿大学助教授・杉本賢治氏が行方不明になっているアインシュタインの脳を求めて全米各地を東奔西走する様子が描かれます。

冷静に考えれば脳みそを捜そうとしている時点で何かが変ですが、作品冒頭アメリカへの入国審査の場面で入国目的を訊かれ、強烈な日本なまり(関西なまり)の英語で「あいむ るっきんぐ ふぉー あいんしゅたいんず ぶれいん」と笑顔で答えます。

「ん? 少し変わった人なのかな?」と何か不安を感じつつ観進めると、いやな予感は的中。

杉本氏は手がかりを持っていそうな人に会うたびこのセリフを連呼、アインシュタインのご当地大学ではアインシュタインTシャツを大人買いするわ、アインシュタインの銅像を見つければ裸足になってよじ登るわ、ここまで来ると「思ってたのと違う……」と呟かずにはいられません。

しかも杉本氏のインタビュー相手に登場する研究者が悉く怪しさ満点で、まるで杉本氏の変わったオーラが変わった人々を引き寄せているかのようです。

終盤漸く鍵を握る人物、トーマス教授に対面できた杉本氏ですが、ここからは信じられない展開の連続に唖然。そして衝撃の結末、シュール過ぎるラストへ。
(ここはあえてふせておきます。興味を持たれた方はぜひご自身の目でご鑑賞下さい)

この映画だけみれば杉本氏は奇人に見えるのですが、実はきちんとした著作を何冊も出している方でその後教授に昇進されています。

私達は研究者など優秀な方にはとても変わった人がいると頭では知っているはずです。

そういった人を続けざまに見ると奇妙な感覚を持つ、というのが本作の種明かし的なものではないかと思いますが、やはり不思議な作品ではあります。




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