この瞬間に吸い込んだかもしれないという恐怖
■作品名アウトブレイク
■監督
ウォルフガング・ペーターゼン
■主演
ダスティン・ホフマン
■DVD/Blu-ray発売元
ワーナー・ホーム・ビデオ
■おすすめの理由
現在一番恐れられている病は、鳥インフルエンザから変異すると言われる、新型インフルエンザでしょうか。
40度以上の熱が続き、脱水症状、脳細胞の壊死、多臓器不全をへて死にいたる病というだけでなく、地球上の人間のほとんどが抗体を持たないというのが、一番怖い点なのでしょう。
この「アウトブレイク」は、そんな新種の病原菌を扱った、とても恐ろしい映画です。
ザイールのある村。目や口、耳から血を流す病に冒された村人たち。アメリカ軍の救援物資が届いたと、村の医師が空を見上げるとそれは……ナパーム弾でした。
数年後のアメリカ行きの飛行機の中。旅行中に風邪でもひいたのか、ひとりの青年が顔を赤くして震えています。熱が高いのか呂律もまわらず、うつっては大変と、彼に話しかけていた坊やをお母さんが慌てて放します。
どこにでもある風景。旅にでれば、行き合うかもしれない光景。
でもその彼が数時間後に、身体じゅうから血を噴き出して死んでしまったとしたら……?
この映画の病の致死率はほぼ100%。発症すれば、数日で死にます。アメリカが誇るCDCの検疫官たちも全く歯が立たず、各地から悲鳴のように寄せられる報告に、立ち尽くすばかり。このままアメリカ全土が飲みこまれるのならばいっそと、汚染されたアウトブレイク(集団、区域)は核の火で焼きつくされてしまうのか。
病原菌は目に見えません。
自分がいまこの瞬間、吸い込んだ空気に、それが含まれていたかもしれません。そんな状況下の人々の絶望と、それでも果敢に闘うダスティ・ホフマンの雄姿を、どうぞご覧ください。