本当に憎かったのは誰? 『フック』
■監督スティーヴン・スピルバーグ
■主演
ダスティ・ホフマン、ロビン・ウィリアムズ
■DVD/Blu-ray発売元
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
■おすすめの理由
皆様は、「ピーターパン症候群」という病をご存知でしょうか。
わたしは専門家ではないので、うろ覚えの知識でのご説明になりますが。この病は、いつまでも子どもの日の夢ばかりおって「大人」になりきれない、年齢だけ重ねてしまった無責任な人間がかかる病のようです。
この「フック」は、児童文学「ピーターパン」の敵役、フック船長の名が付けられていますが、ピーターパンも当然でてきます。ただし、永遠の少年であった頃を忘れて、ただの大人になった彼が。
ウェンディやティンカーベルと自由に空を舞っていたのも今は昔。現在のピーターパンはネクタイにワイシャツ姿で書類にうまり、家族を顧みない仕事人間です。新しいいたずらを探してきらきら輝いていた瞳は寝不足で垂れ下がる瞼で隠れ。不敵にあげられていた口は、むっつりと歪んでいます。
これでは遠路はるばる訪ねて来たティンカーベルだけではなく、冒頭でピータパンが憎いと高らかに叫んでいたフック船長も泣こうというもの。そして、観ている「大人」の一人であるわたしは、身につまされてしまいます。
あぁわたしも、少女の頃のあの夢を、どこに置いてきちゃったんだっけ……なんて。
ピーターパンを務めるのは、上質のコメディには欠かせない存在とわたしが思う、ロビン・ウィリアムス。そしてタイトルロールのフック船長は、ダスティ・ホフマンが務めます。子どもにというよりも、明日が待ち望めなくなった大人にこそ楽しんでほしい、良質のコメディです。