理学療法士試験 内科学の問題傾向
内科学は、心筋梗塞や深部静脈血栓などの循環器疾患。C.O.P.D(慢性閉塞性肺疾患)や肺気腫などの呼吸器疾患。バセドウ病等の代謝や内分泌系の疾患など、疾患の病態を含んだ問題が多いです。心電図の問題は、以前より減少傾向にありますが、他の科目同様、臨床の現場を意識した出題になっていると考えられますので、心疾患全般と並行し、しっかり押さえておきたいです。その他、梗塞予防薬の問題、運動リスクのある疾患に関する問題など、過去問題にない新規の問題が他の科目より、多く出題されやすい傾向にあり、幅広い知識が必要になります。内科学の過去問題と解答
過去問題 第52回(2017年)ワルファリンの作用を減弱させるのはどれか。
- ビタミンA
- ビタミンB6
- ビタミンB12
- ビタミンC
- ビタミンK
この問題の答えは【5】になります。投薬とその作用に関する問題です。ワルファリンは血液凝固を阻害し、一般的な言葉を使うと血液をサラサラにする薬です。ビタミンKは、血液凝固因子の生成に関わります。ワルファリンはビタミンKと競合することで凝固を阻害しますので、ビタミンKの増加はワルファリンの作用を減弱させます。その他のビタミンの作用ですが、ビタミンAはロドプシンの原料となり視覚に作用し、欠乏すると夜盲症になります。ビタミンB6はアミノ酸代謝や神経伝達物質合成に作用し、欠乏すると口内炎などがみられます。ビタミンB12は、赤血球の形成、核酸合成に作用し、欠乏すると悪性貧血がみられます。ビタミンCは、抗酸化作用があり欠乏すると、大航海時代の船員に多かったといわれる壊血病になります。これは長い航海で新鮮な果物を摂取できなかったためと言われています。
なお、壊血病にまつわる話は余談ですが、こういった余談と組み合わせることで記憶は強化されますので勉強方法の参考になればと思います。
過去問題 第52回(2017年)
2型糖尿病の運動療法について誤っているのはどれか。
- 有酸素運動が用いられる。
- インスリン感受性を上昇させる。
- 食事療法との併用が基本となる。
- 尿中ケトン体が陽性の場合においても推奨される。
- 実施にあたってはインスリンが十分に補充されている必要がある。
この問題の答えは【4】になります。尿中ケトン体が陽性の場合は、血糖コントロール不良状態であり、運動中に状態変化などのリスクがあるため禁忌です。他の選択肢はすべて2型糖尿病の運動療法として正解になります。また、2型糖尿病の運動療法では以下の禁忌がありますので押さえておきましょう。
- 空腹時血糖250mg/dl以上
- 尿ケトン体中等度以上陽性
- 網膜症
- 腎症
- 高度の自律神経障害
- 急性感染症
過去問題 第51回(2016年)
心不全に特徴的な呼吸はどれか。
- 下顎呼吸
- 陥没呼吸
- 奇異呼吸
- 起座呼吸
- 鼻翼呼吸
この答えは【4】になります。起座呼吸は、主に左心不全で起こります。この発生機序ですが、左心不全の状態で臥位になると、右心房右心室への静脈還流が増加し、肺血流量も増加します。さらに、肺うっ血や肺コンプライアンスの減少が生じるため、呼吸仕事量が増えます。これを軽減するために起坐呼吸を行うようになります。
1の下顎呼吸は、臥位で顎を突き出す苦しむような呼吸で主に脳血管障害で起きる呼吸です。2の陥没呼吸は、主に小児の呼吸器疾患で起きる呼吸で、吸気時に胸の一部がへこむのが特徴的な呼吸です。3の奇異呼吸は、胸郭の左右の動きが対称的ではない。胸部と腹部の動きが同調がみられない。胸郭が部分的に逆の動きをする呼吸運動であり、一側の無気肺、気胸などでみられます。5の鼻翼呼吸は、呼吸の際に鼻孔が広がることをいい、 呼吸が苦しいことを示す兆候です。こえは主に喘息や肺炎などの呼吸器疾患や弁膜症などの心疾患でみられますが、心不全ではみられません。
次のページでは、臨床神経医学の問題傾向について説明します。