つかこうへいさんの代表作を映画化
■作品名蒲田行進曲(1982年)
■監督
深作欣二
■主演
松坂慶子、風間杜夫、平田満
■DVD販売元
松竹ホームビデオ
■お薦めの理由
1974年の立ち上げから1982年の解散まで日本の演劇界の様々な常識を塗り替えたつかこうへい劇団。その主宰・つかこうへいさんの代表作の1つがこの「蒲田行進曲」です。映画化に当たり、脚本はつかさん自身が担当しています。
■あらすじ
京都の撮影所。一時期の勢いを失いつつある時代劇スター・銀ちゃんこと倉岡銀四郎(風間杜夫)が大部屋俳優のヤス(平田満)の元に、女優の小夏(松坂慶子)を連れて来て、このままだとスキャンダルになってしまいマズイ。お前が小夏と小夏のお腹の子供(勿論、銀四郎の子)を引き受けてくれないかと彼女をヤスの汚いアパートに置き去りにしてしまうのです。
最初は銀四郎に心が残って居る為ヤスに冷たく当たる小夏。でも次第にヤスのピュアさや優しさに惹かれていって……。やっと2人の心が通い合った頃、自分が主演の映画を撮るために、ヤスに命を掛けた「階段落ち」をして貰えないかと頼む銀四郎。いつ子供が生まれてもおかしくない小夏を残し、大好きな銀ちゃんの為に死ぬかもしれない撮影に臨むヤス……。
昭和のパワーが炸裂
舞台では根岸季衣さんが演じた小夏役を映画で松坂慶子さんが演じる事はすぐに決まったものの、ヤス役と銀ちゃん役の俳優がなかなか決まらず(松田優作さんに銀ちゃん役のオファーを断られたりしたそうです。)最終的には舞台で同役を演じた平田満さんと風間杜夫さんがキャスティングされ、2人はこの映画を機に一気にメジャー俳優の仲間入りを果たしました。今観ると「あれ、銀ちゃん免許持ってましたっけ?」「バッキャロウ キャデラックに免許は要らねえんだよっ!」とか、階段落ちをする事を決めたヤスに「やった!これで人が殺せる!」と喜ぶ監督(蟹江敬三)等、ハチャメチャなセリフやシチュエーションが満載で、ある種勢いだけで突っ走っているような所もあるのですが、その分映画という夢の世界に生きる若者たちの必死さや熱さが痛いほど伝わってきます。
銀ちゃんとヤス、そして小夏の奇妙な三角関係。ヤスがどんな目に遭っても大好きな銀ちゃんに対して叫ぶ「銀ちゃん カッコいい!!」の台詞はおかしさの中にどこかほろ苦さが混じっているような気がします。
泥臭い……けど熱い! 昭和の青春映画です。