人生のエピソードを繊細に描いた作品
■作品名ニュー・シネマ・パラダイス
■監督
ジュゼッペ・トルナトーレ
■主演
フィリップ・ノワレ、ジャック・ベラン
■DVD/Blu-ray発売元
角川映画
「お前が死ぬ前に1本だけ映画を見せてやろう」と映画の神様がやってきて言ったら、私は迷わずこう答えます。「では、ニュー・シネマ・パラダイスをお願いします。」……と。
■あらすじ
シチリア島に暮らす映画が大好きな少年・トトは映写技師のアルフレードが映す映画を観る為に毎日映画館に通っている。ある時、火事で映画館が燃え、フィルムを守ろうとしたアルフレードはやけどで視力を失ってしまう。時が経ち青年になったトトは映画監督になる為に故郷を離れローマに旅立つ。そして30年後、映画監督として成功し帰郷したトトは既に亡くなったアルフレードの家を訪ね、そこで彼から託された懐かしい「缶」を開けるのだった。
人生の甘さと切なさとほろ苦さが詰まってる映画
物語の基本は、少年トトが青年になり老年の域に入るまでの人生が淡々と描かれているという内容なのですが、1つ1つのエピソードが本当に繊細に描かれていて「人間て愛らしくて切ないなあ」と心が震えるのです。例えば、映画監督として成功したトトが故郷で皆と再会するシーン。昔、広場で飲んだくれていた酔っ払いが、トトが自分の事を覚えていて微笑んでくれたのかと喜んで走り寄ると……トトが見ていたのは酔っ払いの後ろに居た人で、彼は寂しい微笑みを浮かべながらハグしようとした腕を所在な下げに降ろす……。そんなシーンや、ラストの「缶」の中に入っていたフィルムを繋ぎ合わせて映し出されるキスシーンの場面等、日常の中にある小さなやるせなさや切なさが丁寧に描かれています。だから観る度にいつも違う感情のツボをグっと押されてしまうのです。
この作品は「劇場公開版」 「完全オリジナル版」 「ディレクターズカット版」の3バージョンが公開されたのですが、個人的にはトトと初恋の相手・エレナが中年になってから再会し関係を持つという場面がカットされている「劇場公開版」が1番まろやかな編集で好みです。
観る度に気持ちが優しく揺さぶられ、過ぎて行った日々の事を甘く思い出しながら「でも人生まだ素敵な事も沢山あるよ」と素直に思わせてくれる、宝石箱のような映画……。これからも岐路に立つ度に一生観続けます。