はじめに
開業して3年も過ぎると、依頼は増えました。その分、依頼者とのトラブルも多くなっていきます。お客様は神様ですという言葉があります。しかし、行政書士は公職です。依頼されても、できることとできないことがあります。できないことは、はっきりと断らないといけません。守秘義務に反しない程度で、その話をしたいと思います。嘘や偽りだらけの依頼者とのたたかい
行政書士が書類作成すると、国民が申請するよりも申請がスムーズに進むことがあります。それは、官公庁が有資格者である行政書士の書類作成を信頼しているからです。しかし、これを逆手にとり、行政書士を利用して、虚偽申請を行おうとする依頼者がいます。こういう依頼者はやはりどこかおかしいのです。この依頼は怪しいなと思ったので、様々な角度から質問をしてみました。法廷での審問、浮気を追及する妻の夫への質問責め。目的は同じです。嘘を見抜くことです。
結果、多くの矛盾が露見しました。依頼はお断りします。これ以外の経験からも、外国人関係の仕事に関しては慎重にことを運んだ方がいいということを学びました。もちろん、日本人にも偽りだらけの依頼をする人はいます。やはり、シグナルは発言や事実の矛盾です。
自信満々の依頼人とのたたかい
中小企業の社長さんがみんなそうでないことをお断りしておいた上でお話をするのですが、この時期困ったのが、中小企業の自信家の社長さんからの依頼です。こういう人達は、親分肌で面倒見もいい。個性が極めて強く、人間的魅力にあふれています。押しも強く、何しろパワフルです。しかし、中には、法律の遵守という観念が低い人がいるのです。これまで自分の考えを実行して成功してきた。だから、どうしても自分の価値観で物事を考えてしまうのでしょう。
許認可要件を満たさないと言うと、法律の方が間違っている、法の抜け穴を見つけられないお前の能力が低い、何とか通るよう役所に働きかけろ、ばれたときは責任とるから虚偽のまま申請しろ、など。……苦労が伝わるでしょうか。
断固として断ります。依頼者は神様ではありません。公職としてできないことはあるのです。もちろん、ただ断ったりはしません。代替案の提案、将来的に許認可要件を具備できるような方策の提案もします。それでも受け入れてもらえない場合は仕方ありません。
依頼を断ると、仕事とお金を失いますが、会社に辞表を叩きつけてやったような清々しさは残ります……。