役者根性に胸を打たれる、最後の意地を示した作品
■作品名ハンター (80)
■監督
バズ・キューリック
■主演
スティーブ・マックィーン、イーライ・ウォラック
■DVD販売元
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
■おすすめの理由
この映画は、その俊敏な動きで稀代のアクションスターとなったスティーブ・マックィーンの遺作です。
彼はこの映画で、現代に生き残った実在の賞金稼ぎ“パパ”ことラルフ・ソーソンを演じています。
見どころは、もちろんアクション場面なのですが、撮影中、すでにがんに侵されていた彼の動きに往年の切れはありません。
そればかりか、あのマックィーンが老眼鏡を掛け、車の駐車に何度も失敗し、屋根から屋根へのジャンプを躊躇し、走りながら息を切らせるシーン……、そして「疲れた」「年を取った」などと弱音を吐くセリフが目立ちます。
こちらは「何もそこまで見せなくとも……」と思うのですが、実はこうしたシーンにこそ「俺は最後まで頑張るぜ」という彼の一流のメッセージが込められているのです。
アクションスターとしての最後の意地を示すため、病と闘いながら撮影した彼の役者根性に胸を打たれます。
映画は、生まれたばかりのわが子に「ゴッド・ブレス・ユー(お大事に)」と声を掛け、観客に向かって振り向くマックィーンのストップモーションで幕を閉じます。
これは観客に向けた彼の遺言だったのではないでしょうか。
クールな役を演じることが多かったマックィーンですが、その中でもこのパパというキャラクターは、最も人間臭くて正直なものとして心に残ります。
スティーブ・マックィーンがフィルムに刻み付けた最後の雄姿を堪能してください。